英政府、COP27に合わせ気候変動対応支援パッケージを発表
(英国、エジプト)
ロンドン発
2022年11月08日
英国のリシ・スナク首相は11月7日、エジプトでの国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)での演説で、前回のCOP26で採択された成果文書「グラスゴー気候合意」実現に向けた気候変動対応支援パッケージを発表した。
まず、開発途上国に対し2025/2026年までに英国が拠出するとしている116億ポンド(約1兆9,604億円、1ポンド=約169円)のうち、「適応」に関する資金につき、2019年の5億ポンドから2025年までに15億ポンドへと3倍にする計画を打ち出した。
また、同首相は、森林と気候のリーダーパートナーシップ(FCLP)の発足イベントについても言及。FCLPは26カ国およびEUで構成され、COP26で採択された「森林と土地利用に関するグラスゴー首脳宣言(注)」に関する公約の実施状況を把握することを目的としている。英国は、この枠組みを支援するため、絶滅危惧種が生息する重要な熱帯雨林であるコンゴ盆地の保全に9,000万ポンドを拠出するとした。また、先住民および地域の森林コミュニティーを支援する「自然・人・気候投資基金」への6,500万ポンドの資金提供と、熱帯林の保全と回復に取り組むオランダ企業ツリーバイブ(Treevive)への資金提供も発表した。
そのほか、政府は民間部門と提携して、グリーンイノベーションとエネルギー移行を促進することに焦点を当てるとした。このため、開発途上国の研究者や科学者に助成金を提供する「クリーンエネルギーイノベーションファシリティ」に対して、6,550万ポンドを拠出すると発表。ケニアやエジプトでのグリーン投資プロジェクトの支援も行う。
COP26議長、グラスゴー気候合意からの1年間を総括
11月6日には、COP26議長のアロック・シャルマ氏が開会にあたり演説した。シャルマ氏は、2030年までの排出目標(国が決定する貢献:NDC)について、COP26以降すでに29カ国が更新していることを謝意とともに紹介。ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけとした世界的な経済危機は、既存の気候の脆弱(ぜいじゃく)性と新型コロナ感染拡大の影響を悪化させているとしながらも、世界経済の90%がネットゼロ目標の対象となるなど、COP26開催以降、一定の進展があったと評価した。一方で、パリ協定の「1.5度目標」の達成はこのままでは困難として、目標達成に向けたさらなる協力を各国に求めた。
(注)2030年までに森林の損失を止め、回復に転じることを目指す。
(菅野真)
(英国、エジプト)
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