米議会と政権の合同委、中国の人権侵害に対する超党派の立法措置を支持、年次報告書公表
(米国、中国、香港)
ニューヨーク発
2022年11月21日
中国問題に関する米国連邦議会・行政府委員会(CECC)は11月14日、中国の人権状況と法の支配の発展に関する2022年の年次報告書を公表した。報告書は「中国の中央集権的・権威主義的な統治体制の実態」や「新疆ウイグル自治区での人権侵害」「香港に対する統制の強化」などについて詳述している。CECCは連邦議会上下両院の議員と政権高官で構成している。
CECCは報告書で、中国政府が市民生活の多くの側面を支配しようとしている状況は変わっていないと指摘し、テクノロジーを活用して市民生活をコントロールした実例として新型コロナウイルス対策の「ゼロコロナ政策」の下で行われた厳格な都市封鎖に言及した。対外関係では、中国政府による経済的威圧が他国の政府と企業の脅威になっていると記した。中国政府による貿易制限や、当局による消費者に向けたボイコットの呼びかけなどが地方レベルでは効果を上げており、企業が自己検閲を行ったり、中国政府の要求に従ったりする場面が多々見られると報告した。
報告書では、米国が問題視する新疆ウイグル自治区の人権状況について、多く記述した。同自治区政府は少数派民族などに対する強制労働のシステムを維持し、顔認証技術や携帯電話を用いてデジタル監視システムを構築していると明記した。「ビジネスと人権」の章では、同自治区の企業と取引・調達関係にある企業は自治区での人権侵害に加担する重大なリスクがあるとの懸念を示した。とりわけ、トマト製品や電子機器、綿製品に関わる多国籍企業のサプライチェーンは同自治区での強制労働に関与している可能性があるとの報告を紹介した。デジタル監視に関しては、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)が中国政府に製品を提供しているとの報道に触れた。
CECCは議会と政権への提言も示した。具体的には、同志国に対して、米国で6月に施行された新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法(UFLPA、2022年8月5日付地域・分析レポート参照)と同様の政策を実施するよう促すことを求めた。そのほか、企業のサプライチェーンの透明性を高める立法措置などの検討や、新疆ウイグル自治区に関する企業向け勧告(2021年7月14日記事参照)の更新などを挙げた。
CECCはプレスリリースで「中国における人権侵害に対して、米国の対応を強化する超党派による立法努力を支持し続ける」と訴え、その例としてUFLPAにも言及した。UFLPAの執行状況を巡っては、2022会計年度(2021年10月~2022年9月)に米国税関・国境警備局(CBP)が差し止め、輸入を認めなかった3,000を超える輸入貨物の約半分が同法に基づくものだったとされる(ブルームバーグ10月20日)。
(甲斐野裕之)
(米国、中国、香港)
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