バイデン米大統領、COP27で演説、アフリカ諸国の気候変動対策支援に1.5億ドル拠出表明
(米国、エジプト)
ニューヨーク発
2022年11月15日
米国のジョー・バイデン大統領は11月11日、エジプトで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で演説し、気候変動対策支援としてアフリカ諸国に1億5,000万ドルを拠出すると表明した。11月8日に行われた中間選挙後、初めての外遊となった。
大統領は演説で「主要排出国は(産業革命前からの気温上昇の)1.5度目標で協調が必要」と述べたほか、COP27開会スピーチでアントニオ・グテーレス国連事務総長が言及した「気候変動地獄」(注)に触れ、その回避のため米国は自らの役割を果たすと述べて、前年に表明した2024年度までに気候変動対策支援に現在の4倍となる年間110億ドルの予算計上を議会に求めていくことをあらためて強調するとともに、異常気象の早期警戒システム拡充など、アフリカ諸国の気候変動対策支援に新たに1億5,000万ドルを拠出することも表明した。その他、米欧が主導する「グローバル・メタン・プレッジ」について(2022年6月23日記事参照)、各国のさらなる取り組みを呼びかけ、EUなどと協調して新たなメタンガス規制に取り組むことも併せて表明した()。
また、閣僚級として参加している米国のジョン・ケリー気候変動担当大統領特使は9日、途上国のクリーンエネルギー移行に必要な資金を民間から調達する計画「Energy Transition Accelerator」を提案した。計画では、途上国が化石燃料からクリーンエネルギーに転換した際の二酸化炭素削減分の排出権を企業に販売することによって、途上国は気候変動対策に必要な資金を調達できるというもの。この計画は、小売り通販大手アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏の環境基金とロックフェラー財団との連名で発表され、チリやナイジェリアが計画に興味を示しているほか、大手銀行のバンク・オブ・アメリカやIT大手マイクロソフトなどの企業も関心を示しているとしている。また、ケリー特使は、関係悪化を理由に温暖化対策での協力・協議が実質的に中断している中国と今回、非公式に意見交換したと明らかにしている(CNN、11月10日)。
COP27を契機に気候変動対策をさらに推し進めたいバイデン政権だが、先行きには不透明感も漂う。予想に反して民主党が善戦している中間選挙だが、現状では下院は共和党が獲得議席数でリードしており、仮にこのまま共和党が下院の過半数を獲得すれば、予算審議の難航が予想され、バイデン大統領が述べた気候変動対策予算増額も実現可能性が低下する。COP27の結果とともに、中間選挙結果についても引き続き注目が集まる。
(注)グテーレス国連事務総長はCOP27開会のスピーチで「われわれは、気候変動地獄へと向かう高速道路を、アクセルを踏んだまま進んでいる」と述べた。
(宮野慶太)
(米国、エジプト)
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