ASEAN5カ国の中銀がクロスボーダー決済連結性の覚書を締結

(ASEAN、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピン)

バンコク発

2022年11月22日

タイ中央銀行(BOT)、インドネシア中央銀行(BI)、マレーシア中央銀行(BNM)、フィリピン中央銀行(BSP)、シンガポール金融管理局(MAS)は11月14日、インドネシアのバリ島でASEAN域内における決済連結性(RPC)の協力に関する覚書を締結した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます5カ国の間で、より迅速で透明性が高く、手数料も低いクロスボーダー決済の実現を目指す。同覚書は、2019年に開始されたASEAN決済連結性にかかるイニシアティブの下での協力で、域内の金融統合を促進する目的がある。

RPCは、ASEAN地域経済の回復・包括的成長に貢献することが期待されている。クロスボーダー決済の連結性が強化されることで、国境を越えた貿易・投資、金融・送金、観光などの経済活動が促進され、ASEANでの包括的金融エコシステムの実現が期待されている。特に、零細・中小企業にとっては、国際市場への参入が容易となり、恩恵が大きいとされる。

具体的なメリットとしては、例えば、タイからインドネシアに出張した場合、現在ではインドネシアのタクシー大手「ブルーバード」などに乗車すると、料金支払いの際にはバンコク銀行のアプリを使って、QRペイメントでタイの口座から即時支払いをすることが可能だ(注)。

写真 タイのQR決済アプリを用いてブラック ジャック カード ゲームで支払いができる(ジェトロ撮影)

タイのQR決済アプリを用いてインドネシアで支払いができる(ジェトロ撮影)

写真 ブラック ジャック カード ゲームのブルーバード(ジェトロ撮影)

インドネシアのブルーバード(ジェトロ撮影)

覚書調印式で、BOTのロナドン・ヌムノンダ副総裁は「ASEANは現在、国境を越えた決済連携で世界的に注目されている」と強調した。今回の覚書は、ASEAN加盟国による2国間クロスボーダー決済の既存ネットワークと連携し、今後の多国間協力のベースとなる。ASEAN地域の決済接続をさらに強化し、ASEANDX、地域の金融統合を深化させる。また、BIのペリー・ワルジヨ総裁は「ASEAN地域の決済連結性は、QRコードを利用して機能させる。現地通貨決済のため、米ドルに換金する必要がない」としている(「バンコク・ポスト」紙1114日)。

(注)現状、銀行によってクロスボーダーQR決済が可能な国およびQR規格が限定されており、事前に確認する必要がある。例えば、バンコク銀行のアプリの場合は、インドネシア(QRIS)、マレーシア(DuitNow)、シンガポール(NETS)、ベトナム(VIETQR)でQR決済ができる。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(ASEAN、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピン)

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