気候変動にレジリエントな債務条項の融資契約への採用を呼び掛け
(英国)
ロンドン発
2022年11月17日
英国のジェームズ・カートリッジ財務長官は11月9日、エジプトで開催中の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)で、民間セクターでの融資で使用する、気候(変動)にレジリエントな債務条項(Climate Resilient Debt Clauses:CRDCs)の基礎となる主要原則を発表。同原則とは、民間部門ワーキンググループが発表した、CRDCsなど気候変動に対応した債務繰り延べ条項を融資契約に盛り込むためのモデルとなるタームシート(融資の主要条件をまとめた書面)であり、同タームシートは国際資本市場協会(ICMA)のウェブサイトに掲載された。政府は民間銀行、2国間融資機関、国際金融機関を含む債権者に対し、CRDCsの採用を検討するよう呼び掛けた。
他国の輸出信用保証機関に先駆けて、英国輸出信用保証局(UKEF)がCRDCsを融資契約に盛り込むことも発表された。これにより、低所得国や開発途上国がハリケーンや洪水などの気候変動災害を受けた場合、UKEFへの債務返済を繰り延べできるようになる。気候変動に対応し国民を守るか、それとも債務を返済するか、厳しい選択を迫られている国もあり、UKEFによるCRDCsの導入により、各国政府が災害からの対応・復旧に注力することができるとした。
政府は、多国間開発金融機関も、CRDCsなどのアプローチをさらに検討するため、非公式のワーキンググループを設置することで合意したとした。
英国政府がCOP26で発表した、ネットゼロへの移行計画の開示義務化(2021年11月5日記事参照)に向けて、財務省が立ち上げた移行計画タスクフォース(TPT)は2022年11月8日、開示の枠組み案と運用ガイダンス案を発表した。政府はこれらを、消費者、投資家向けに、企業がどのような手順でネットゼロを達成するかを示すための指針となるもので、ともに短期・中期的な移行計画の準備・開示を推奨する内容だとした。これらの内容に関しては、2023年2月28日まで意見公募が行われる。
さらにTPTは、運用をテストするためのオンラインサンドボックスの開始も発表。企業や金融機関などに対し、枠組み案やガイダンス案を適用する際の経験を、サンドボックスに登録してフィードバックするよう促した。
(島村英莉)
(英国)
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