米家計債務、ブラック ジャック ゲーム ルール.5兆ドル、住宅ローン組成は新型コロナ禍前水準に
(米国)
ニューヨーク発
2022年11月17日
米国ニューヨーク連邦準備銀行は11月15日、家計債務と信用に関する報告書を公表した。その中で、2022年第3四半期の家計の債務総額は16兆5,100億ドルと、2021年末からは約1兆ドル増加しており(2022年2月16日記事参照)、2007年以降で最大の伸びになった2021年を上回るペースで家計債務が増加していることが明らかになった(添付資料図参照)。
2022年の債務総額のうち、住宅ローン残高は11兆9,900億ドルで2021年末より約7,500億ドル増えている。ただし、2022年に入ってからの急激な金融引き締めの影響でその勢いは鈍化しており、住宅ローン組成額は6,325億ドルと、ピークだった2021年第2四半期の1兆2,178億ドルから約半減し、新型コロナウイルス感染拡大前の2020年第1四半期の6,617億ドルの水準にまで戻った。30年固定住宅ローン金利の平均は、2021年末に3%程度だったが、足元では7%を超えており、この影響などが色濃く出たかたちだ。一方、自動車ローン残高は1兆5,200億ドルで前期比220億ドル増と順調に伸びているほか、クレジットカードローン残高も9,300億ドルと前期より380億ドル増、前年同期比では15%増と、過去20年間で最大の伸びとなり、堅調な個人消費を反映した結果となっている。非住宅ローン残高のうち最も額が大きい学生ローン残高は1兆5,700ドルで、前年からほぼ横ばいだった。9月に発表された学生ローン債務減免などの救済措置が影響しているとみられる(2022年9月28日記事参照)。ただし、この債務減免については、テキサス州連邦地裁にて違法との判断が下されるなど係争中となっており(ロイター11月11日)、今後の動向には留意が必要だ。
家計の債務総額は高水準にあるものの、ローン延滞率は比較的低水準にある。9月時点で未払い債務の2.7%が延滞されているが、これはパンデミック前の2019年第4四半期と比べれば2.1ポイント低い水準にあり、2021年末からはほぼ横ばいだ。
11月16日に商務省が公表した10月の小売統計では小売売上高が前月比1.3%増と、金融引き締めによる経済環境悪化にもかかわらず、消費は堅調さを保っており(2022年11月17日記事参照)、家計債務のクレジットカードローン残高をみても消費意欲は衰えていないようだ。一方で、ローン延滞率に顕著な上昇はないなど、家計のバランスシートは一定の健全性を保っているとみられる。全米自動車協会(AAA)は15日、11月下旬のサンクスギビング休暇中に自宅から50マイル(約80キロ)以上、旅行する人は前年同期比1.5%増の5,460万人との見通しを示した。これは2000年の集計開始以降、3番目の多さだという。10月の消費者物価上昇率ではその鈍化傾向が確認されており(2022年11月11日記事参照)、インフレ率がこのまま鈍化しつつ、消費なども堅調さを維持するという経済のソフトランディングができるか今後が注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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