第15回総選挙、各政党連合とも過半数に届かず膠着続く

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年11月24日

マレーシアで1119日に実施された第15回総選挙で、2018年に政権交代を実現した希望連盟(PH)が最大82議席を獲得したが、各政党連合ともに単独過半数には届かなかった。国会は二院制で、上院議員(任期3年)は国王が任命する一方、首相選出につながる下院議員(任期5年:定数222、小選挙区制)は選挙で決まる。

選挙管理委員会の集計によると、投票率は73.9%で、前回の82.3%を下回った。独立後長年続いた連立与党でイスマイル・サブリ前首相が所属する国民戦線(BN)は、幹部の汚職問題などが影響して大幅に議席を減らした(添付資料表1参照)。BNの惨敗を受け、BN最大構成党の統一マレー国民組織(UMNO)内部からは、汚職で起訴歴のあるアフマド・ザヒド党首の辞任を求める声も高まっている。

2018年の前回総選挙で史上初の政権交代を実現したPHは、議席数を前回から減らすものの、最多を獲得した。クアラルンプール首都圏やペナン州、ジョホール州を中心とした地域での華人系や一部インド系による根強い支持に加え(添付資料表2参照)、クリーンな政治を求めるマレー系も投票したことが背景にあるとみられる。今回、選挙権が21歳から18歳に引き下げられて初の総選挙で、若年層も透明性の高い政治を求めたという。

ムヒディン・ヤシン元首相率いる国民同盟(PN)が躍進した背景には、獲得73議席のうち49議席を得た全マレーシア・イスラム党(PAS)の寄与がある。同党の躍進により、PNが連立で過半数を獲得した場合には、政策面でイスラム保守色が強まる可能性もある。

今回の選挙では、マハティール元首相も祖国戦士党(プジュアン)を率いてケダ州ランカウイ選挙区から立候補したが、5人の候補者の中で4位(得票率約10%)と大敗した。プジュアン自体も議席は獲得できなかった。このほか、新型コロナウイルス対策で手腕を発揮し、次世代リーダーとして期待を集めていたUMNOのカイリー・ジャマルディン前保健相、10月に2023年国家予算を議会に提出したザフルル・アジズ前財務相、産業界をリードしてきたアズミン・アリ前国際貿易産業相など、若手の現職閣僚の落選も相次いだ。

首相決まらず、膠着状態続く

過半数を獲得した政党連合がないため、政権樹立に向けた連立確立を巡る協議・交渉が続き、1123日現在、議会は膠着(こうちゃく)状態が続いている。憲法は「国王が下院議員の過半数の信任を得ていると判断した議員を首相に任命する」と定めている。

国王は各政党・政党連合に対し、当初は21日午後2時までに、確保した議員数と首相候補者名を下院議長に提出するよう命じていた。交渉が難航したため、翌22日に期限を延長した後、PNPHの指導者が国王と会見。さらに国王は23日にBNの議員らと個別に面談したものの、いまだ新首相の指名に至らず、協議が続いている。

(吾郷伊都子、エスター頼敏寧)

(マレーシア)

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