カントー大学で日本のODAによる研究施設が竣工
(ベトナム)
ホーチミン発
2022年11月09日
ベトナム南部メコンデルタ地域の国立カントー大学で10月30日、総合研究実験棟および先端研究棟の竣工(しゅんこう)式が開催された。両施設は、国際協力機構(JICA)の円借款事業による支援の一環として建設された。併せて145の実験室、69の研究室、48の教室などを備え、同大学で先進的な研究・教育を行うために活用される。
竣工式には、カントー市のチャン・ビエット・チュオン人民委員長、同大学のハ・タイン・トアン学長、在ベトナム日本大使館の渡邊滋次席公使、JICAベトナム事務所の清水曉所長らが出席した。
JICAの円借款「カントー大学強化事業」は、カントー大学の農業、水産、環境の3分野における研究・教育能力の強化を目的として、2015年に開始された。プロジェクト全体の総事業費は123億600万円で、そのうち104億5,600万円が円借款供与。今般の実験棟および研究棟の竣工に先立ち、大学の敷地内には実験施設として3,800平方メートルの農業用ネットハウス、2,827平方メートルの養殖場も建設されている。
また、同事業では施設建設のほか、博士号・修士号修得に向けた日本留学や短期研修などの人材育成や、日本の大学や企業との連携による研究支援なども実施している。
人材育成に関して、ハ・タイン・トアン学長は竣工式の中で「事業実施以降の7年間で、博士課程を修了した講師が36人、修士課程を修了した講師が9人、日本の大学で短期研修に参加した講師が53人いる。それぞれが質の高い人材として大学運営に貢献している」と述べ、これまでの成果を強調した。
日本企業との連携事例については、新潟市に本社を置く食品関連専門商社のタケショーとの共同研究・開発が挙げられる。同社は、カントー大学キャンパス内にラボを開設し、メコンデルタ地域の豊富な農水産資源の有効活用を目的として、同大学と共同で新技術(高度利用加工技術)を用いた食品素材の研究開発を行っている(注)。
日本のODAを通じて、同大学が農業、漁業、環境および関連分野の科学的研究能力を向上させ、メコンデルタ地域の農業と漁業の価値を高めるとともに、質の高い人材を輩出することが期待されている。
(注)成果として、エビの頭部などの副産物から菌数を制御した乾燥粉末調味料の開発や、ベトナム米を用いた機能性ライスパウダーの開発がある。
(児玉良平)
(ベトナム)
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