スウェーデン、3党連立の新政権発足
(スウェーデン)
ロンドン発
2022年10月19日
スウェーデン議会の承認を10月17日に受けたウルフ・クリステション氏()が18日、スウェーデンの新首相に就任した。同首相は就任に伴い、穏健党13人(首相を含む)、キリスト教民主党6人、自由党5人の閣僚で構成する3党連立政権を発表した(添付資料表参照)。第2党スウェーデン民主党は閣外から協力する。
クリステション首相は就任演説で、以下の4点に取り組むと述べた。
- 国全体の治安の回復
- 高インフレとエネルギー価格上昇によるコスト増対策
- 気候変動目標の達成などのためのエネルギー危機からの脱却
- 安全保障に関する政策環境を整えるための国防整備
治安の回復については、刑法の見直しや集団犯罪への対応強化などを掲げた。また、大量の移民流入と統合の失敗により社会に問題が生じているとし、市民権取得に関する条件の厳格化、不法移民が経済的支援を受ける権利の廃止などを行うとした。難民などの庇護(ひご)権は保証するとした一方、隣国からの入国者に対する一時的な保護としEU法で要求される水準以上に寛容な施策は取らないとした。市民権取得を希望する場合は、スウェーデン語の学習と自活に関する要件を設けるとした。
コスト上昇に対しては、短期的には家庭・企業向けに電気代に関する支援措置を実施するほか、燃料価格の引き下げに向けて取り組む。長期的には、企業の事務手続き緩和、社会給付の改革を通じた失業者の就労促進、就業を継続する高齢者へのインセンティブ向上などに取り組む。
エネルギーに関しては、消費量の削減、効率性向上に向けた支援を行う。2040年までに電源を再エネ100%とする目標から炭素排出ゼロ100%へと変更し、原子力発電の開発、拡大を推進、新設に当たり信用保証を提供するほか、認可手続きの迅速化などに向けた法改正を行う。
外交・国防・安全保障については、NATOへ加盟を果たし、防衛能力を強化するとした。また、2023年1月からEU理事会(閣僚理事会)の議長国を務めるに当たり、EU全体の安全保障の強化、ウクライナの共同支援、エネルギー供給、気候変動対応やEUの競争力強化が重要との認識を示した。開発政策については、援助のGNI(国民総所得)比目標を撤回するほか、国際機関を通じた援助から市民社会を通じた援助に重点を置くとした。ウクライナに対しては、政治、経済、安全保障の観点で支援を行い、復興支援に当たって国際開発協力・外国貿易相に特別な権限を与えるとした。
(島村英莉、篠崎美佐)
(スウェーデン)
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