メローニ内閣が始動、女性・民間閣僚は減少

(イタリア)

ミラノ発

2022年10月26日

イタリアの同胞(FDI)の党首ジョルジア・メローニ氏は10月21日、セルジオ・マッタレッラ大統領から、イタリア初の女性首相として指名を受けた。同日夜には関係閣僚が発表され、新たな政権が発足。翌22日には宣誓式が行われ、新内閣の船出となった。

イタリアでは7月12日に、連立主要政党の五つ星運動の離反を発端とし、マリオ・ドラギ政権が崩壊(関連ブラック ジャック トランプ)。9月25日の総選挙では中道右派連合が大きくリードし勝利をおさめたが、右派内の得票格差が顕著となった()。FDIが圧倒的に支持を集め、特に右派の一角である同盟(Lega)が、地盤でもあるロンバルディア州など北部地域おいてもFDIの半数の支持率という結果となった。もともとは支持層が限定的だったメローニ氏が、Legaおよびフォルツァ・イタリア(FI)との連携により全国的な支持を得たという背景もあり、メローニ氏が閣僚人事で各党のバランスをどうとるかが注目されていた。

民間・女性閣僚は減、政党色の強い内閣に

24人の閣僚のうち、FDIからは9人、LegaおよびFIからはそれぞれ5人、政党に所属しない民間人閣僚は5人選出された(添付資料表参照)。女性閣僚は、メローニ氏を除き6人が就任した。ドラギ政権では民間人閣僚と女性閣僚はそれぞれ8人だった(ドラギ新内閣が正式発足へ、ブラック)。

Legaのマッテオ・サルビーニ党首は、以前に経験のある内務相への再任を希望していると連日報道されていたが、インフラ相に起用。内務相には無所属のマッテオ・ピアンテドージ氏が就任した。サルビーニ氏は副首相も兼任する。

また、大きな焦点となっていた予算の鍵を握る経済・財務相については、ドラギ政権で経済開発相を務めたジャンカルロ・ジョルジエッティ氏(Lega)を任命。イタリア銀行の総裁や欧州中央銀行(ECB)の理事を務めた経験のあるファビオ・パネッタ氏らの名前が挙がっていたが、Legaの推薦が通った結果となった。外務・国際協力相は、当初から有力視されていたアントニオ・タヤーニ氏(FI)。同氏は欧州議会議長の経歴を持ち、EUとの調整役と期待されており、副首相も兼任する。また、選挙期間中から公約として挙げていた海洋相については、南部・国土統合担当相を引き継ぐかたちで、「海洋・南部政策担当相」として実現した。10月3日付「コリエーレ・デラ・セーラ」紙によると、同省は港湾インフラを強化し、イタリアの地の利を生かした政策や、観光客誘致などを管轄する、と報じられている。また、経済開発相は改名され、「企業・メードインイタリー相」となった。

イタリア産業連盟のカルロ・ボノーミ会長は、女性首相の誕生をたたえるとともに、新政府に対してエネルギー問題への一刻も早い対応を要望した(ANSA通信10月22日)。同氏は新内閣発表前に、右派連合の掲げている公約の1つであるフラットタックス制や早期退職制度に異を唱え、「次期政権はエネルギー危機からの、イタリアの産業システムの救済を最優先にすべき。一定の貧困層の救済のためのものを除き、資源をイタリアの根幹である産業に集中するべきだ」というコメントも出している(「ラ・レプブリカ」紙10月3日)。今後の調整がさらに注目される。

(平川容子)

(イタリア)

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