WIIW秋季予測、中・東欧と西バルカン諸国、2023年には難局に直面
(中・東欧、西バルカン)
ウィーン発
2022年10月26日
ウィーン比較経済研究所(WIIW)は10月19日、中・東欧と西バルカン諸国の秋季中期予測を発表した。2022年の経済成長には、ロシアのウクライナ侵攻は春に予想されたほど大きな悪影響を与えなかった。2022年上半期の経済は、新型コロナ禍からの回復需要や、強い個人消費に支えられ大幅に拡大した。下半期に入るとウクライナ侵攻が影響し景気が冷え込み始めたが、2022年通年の実質GDP成長率は中・東欧EU加盟国(11カ国)が3.9%、西バルカン(6カ国)が3.1%になる見通し(添付資料表参照)。
2023年の経済成長は、ハンガリー以外ではプラスを維持するものの、減速する見通しだ。「高まるインフレは実質所得を減らし、成長の最重要柱だった個人消費が後退する。さらに、エネルギー危機や、(最大の貿易相手国である)ドイツ経済の冷え込み、政策金利の引き上げ、各国政府の財政支援の不充分さが加わる。最悪の状況はまだ来ていない」と、同予測の担当者のブラニミール・ヨバノビッチ氏は分析した。
インフレは高止まり、下方リスクも多い
2022年の各国の消費者物価上昇率(インフレ率)は、アルバニア(7.0%)、スロベニア(9.4%)、クロアチア(9.5%)を除いて、2桁になる見込み。中・東欧諸国のインフレ率が西欧より高いのは、同地域の世帯の所得が西欧より低く、物価上昇が著しい食品への出費の割合が大きいことが主な原因だ。2023年には、インフレ率は若干下がるが、おおむね1桁後半の水準で推移する見通し。
労働市場は2022年、多くの国で新型コロナ禍から著しく回復するとの見込み。2桁の失業率は西バルカンに限定される。ポ―ランド、チェコ、ハンガリーでは3%前後、業種によって人手不足も発生するとみられる。
今回の予測の下方リスクは数多くある。ウクライナ侵攻の行方は予想しにくいが、WIIWは2023年末までは続くことを前提にした。ロシアからのガス供給も、ガスへの依存度の高い国の経済を左右する。天然ガスの供給制限が不可避になれば、不況に陥る国もある。特にハンガリー、リトアニア、ラトビア、ルーマニア、スロバキアでは、エネルギー総消費量に占めるガスの割合が高い。厳冬の場合、ガス供給が困難になる可能性もある。その上、新型コロナ禍もまだ収束しておらず、ドイツ経済の需要動向も予想しにくい。
(エッカート・デアシュミット)
(中・東欧、西バルカン)
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