EUとASEAN、世界初となる「ブロック間」の航空自由化協定に署名
(EU、ASEAN)
ブリュッセル発
2022年10月18日
欧州委員会は10月17日、EUとASEANが包括的航空輸送協定に署名したと発表した(プレスリリース)。同協定はブロック間で合意された世界初の航空協定となり、EUとASEANの各加盟国が締結している140以上の既存の2国間協定を置き換える。協定の交渉は2016年に開始され、2019年6月に合意していた。これまで2国間協定が締結されていなかった加盟国間でも適用されることから、EUとASEANの全37カ国、合計11億人を結ぶ巨大な航空協定が誕生した。
目玉となるのは、両地域間の航空便の自由化だ。EUを本拠地とする航空会社は、EU加盟国の空港からASEAN加盟国の空港への旅客・貨物の直行便運航が可能となり、ASEANを本拠地とする航空会社も同様に、ASEAN加盟国の空港からEU加盟国の空港への旅客・貨物の直行便運航ができるようになる。欧州委によると、同協定は今回の署名をもって適用が開始され、今後、EUとASEANの各加盟国による批准手続きを経て施行される。2019年には800万人以上がEU・ASEAN間の航空便を利用しており、新型コロナ禍からの回復が続く中で、今後さらなる拡大が期待される。
以遠権による運航も一部開放
同協定では、EU・ASEAN間の直行便に加えて、一定の以遠権(自国から協定相手国を経由して、第三国に航空便を運航する権利)も認めている。EUの航空会社は、EU加盟国からASEAN加盟国を経て、さらに他のASEAN加盟国あるいは第三国への旅客・貨物便の運航が認められる。ASEANの航空会社についても、EU加盟国からの以遠権による運航が同様に認められる。ただし、以遠権により運航する旅客便数には制限があり、同協定の施行直後は、加盟国ごとに最大週7便に限って運航が認められる。施行から2年後にはさらに週7便の運航が認められることから、以遠権により運航可能な旅客便数は合計で最大週14便まで拡大する。また、拡大後の週7便に関しては、相手側の加盟国の航空会社が既に運航するEU加盟国あるいはASEAN加盟国から第三国間のルートと同一のルートの運航は認められない。貨物便に関しては便数や運航ルートに制限はない。
このほか同協定は、EUとASEANの航空会社間の公平な競争環境を整備すべく、それぞれの加盟国に対して、競争法と独立した競争当局を整備することを義務づける。また、例外が多数設定されているものの、公平な競争環境に悪影響を及ぼす場合、加盟国による航空会社への補助金の提供は禁止される。
(吉沼啓介)
(EU、ASEAN)
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