燃料価格1リットル当たり30ユーロセントの割引を11月中旬まで継続
(フランス)
パリ発
2022年10月19日
フランスのエリザベット・ボルヌ首相は10月16日、民放TF1のニュース番組に出演し、燃料価格の割引制度について、11月中旬まで1リットル当たり25ユーロセント(税込み30ユーロセント)の割引を継続すると発表した。また、石油大手トタルエナジーズの会長と電話で会談し、同社のガソリンスタンドで実施されている同20ユーロセントの値引きを延長することで同意を得たことを明らかにした。燃料価格の割引額は11月1日から、政府の同割引制度が同8.33ユーロセント(税込み10ユーロセント)に、トタルエナジーズによる値引きが同10ユーロセントに、それぞれ引き下げられる予定だった(ブラック ジャック ストラテジー)。
フランスでは、賃上げ交渉に絡んで9月末に始まった製油所ストの影響で、ガソリンなど自動車燃料の供給不足が深刻化した。政府は石油戦略備蓄を放出すると同時に、公序維持の観点から、多数派労組と賃金合意が成立したエッソおよびトタルエナジーズの一部の貯蔵所で従業員を徴用し(注)、10月12日と13日に操業を再開させた(10月12日の閣議後のオリビエ・ベラン政府報道官による記者会見ほか)。しかし10月15日付BMFTVによれば、 同日時点で1種類以上の燃料の在庫が切れたガソリンスタンドの割合は全国平均で27.3%と前日の28.5%からやや改善したものの、パリ首都圏を含むイルドフランス地域圏では39.9%と依然高い水準を示す。
ボルヌ首相は16日の上述のインタビューで、必要ならば新たな徴用も辞さないと言明し、賃金合意に反発してストを継続する少数派労組に対し就業を再開するよう求めたが、ガソリン供給の正常化には時間がかかるものとみられる。
少数派労組の中心となるフランス労働総同盟(CGT)は、交通、エネルギー、教育など幅広い部門で、賃上げやスト権の擁護などを求める大規模なストの10月18日の実施を呼びかけた。
(注)徴用措置は公序、公衆衛生などの維持・改善を目的に、地方長官(Prefet)がアレテ(決定)により発令する権限を持つ(地方自治法第2215-1条)。徴用拒否は違反行為とみなされ、6カ月の禁錮刑および1万ユーロの罰金が科される。
(山崎あき)
(フランス)
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