メキシコ政府と生産・流通企業15社が食料品価格抑制策に合意
(メキシコ)
メキシコ発
2022年10月07日
メキシコ政府と食品製造企業や流通企業15社は10月3日、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領の早朝記者会見において、食料品における価格上昇の抑制を目的としたインフレ率上昇抑制策(PACIC)の第2次協定に署名した。署名には、トルティーヤ製造企業のグルーポ・ミンサ(Grupo Minsa)やグルーポ・グルーマ・マセカ(Grupo Gruma-Maseca)、メキシコの大手スーパーマーケットチェーンであるウォルマート(Walmart)やソリアーナ(Soriana)、チェドラウイ(Chedraui)が参加した。PACICは2022年5月4日に発表され、同日にも複数の民間企業が6カ月間の自主的な価格抑制で合意していた(2022年5月10日記事参照)。
同会見でロヘリオ・ラミレス・デ・ラ・オ大蔵公債相は、政府と民間企業との協調により、主要24品目における基礎物資のバスケット平均価格を1,129ペソ(約8,129円、1ペソ=約7.2円)から1,039ペソに8%引き下げることが可能になると強調した。また、政府は不足している穀物の国内生産を強化するプログラムに重点を置き、白トウモロコシ、豆類、イワシ、食品包装に使うアルミ・鉄スクラップの輸出を一時的に停止すると発表した。この規制に関して他の製品への拡大も検討している。
一方で、メキシコ政府はこの協定に署名した企業に対し、全国農業食糧衛生無害性品質サービス機構(SENASICA)やメキシコ連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)を含む食品および食品包装資材の輸入と流通に関する全ての手続きや許認可を免除する、シングルユニバーサルライセンス(延長なしの総括的輸入許可)を付与する。ただし、各社は輸入する商品が安全品質基準に適合していることを確認する責任を負うこととしている。また、関税や国際貿易における非関税障壁などについて、食品の輸入と国内での流通の妨げになり、価格上昇の原因となりうる全ての規制の見直しを一時的に停止する。このライセンスを付与された企業は、輸入・流通される食品や包装資材が高品質で、健康やその他の偶発的な問題がないことを保証するために必要な検証を実施することを約束するとしている。
デ・ラ・オ大蔵公債相は「インフレが需要主導型である米国とは異なり、メキシコでは供給主導型だ」と強調した。「そのため、食糧供給を強化するために、より多くの食糧を生産し、政府や生産者の規制・物流コストを削減することが最善の対応策だ」と述べた。
食品の安全性や国際協定違反を懸念する声も
今回の政策に関して、メキシコ経営者連合会(COPARMEX)の会長であるホセ・メディナ・モラ氏は「参加企業の幅が広がれば、より大きなインパクトが期待できる。企業が参加すれば供給が増え価格が下がるので、より広い範囲に波及する可能性がある」と発言した(「エル・フィナンシエロ」紙10月4日)。一方、日本の経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)はプレスリリースにおいて、「インフレ抑制のために新たな方法を模索するアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領のイニシアチブを支持するが、衛生管理および規制管理なしに輸入を開放することは、メキシコ国内の食品に不必要なリスクの扉を開くことになりかねない」と述べ、一部の品目について輸出を禁止することは、メキシコが締結する国際協定に反する可能性がある旨を懸念している。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
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