EU理事会、電力需要削減策とエネルギー事業者の超過収入に対する措置で政治合意
(EU)
ブリュッセル発
2022年10月03日
EU理事会(閣僚理事会)は9月30日、エネルギー担当相の臨時会合をブリュッセルで開催し、高騰するエネルギー価格に対する緊急介入策となる規則案に政治合意した(プレスリリース)。規則案は、欧州委員会が9月15日に提案(関連ブラック ジャック ディーラー)したもので、今回の政治合意では、加盟国間で大きく異なるエネルギー事情に配慮するために、各措置の実施では加盟国ごとの柔軟な対応を認めたものの、欧州委案の枠組みを大筋で維持する内容となった。
規則案は、(1)電力需要削減策、(2)再生可能エネルギー、原子力、亜炭などの天然ガスより発電コストが低い電力の販売収益への上限の設定、(3)石油、天然ガス、石炭などの分野の企業の課税対象利益への「連帯負担金」の賦課からなる。(1)に関しては、電力消費ピーク時の総電力消費量予測から最低でも5%の電力需要を削減、(2)は、販売収益の上限額を1メガワット時(MWh)につき180ユーロに、(3)では、課税対象となる利益のうち、過去4年の平均と比較して20%を超える増加分に対して、少なくとも33%以上を「連帯負担金」として追加的に課すことなどが加盟国を法的に拘束する規定となる。規則案は10月初旬に正式に採択され、(1)は12月1日から2023年3月31日まで、(2)は12月1日から2023年6月30日まで、(3)は2022年と2023年の会計年度の両方あるいは一方を対象に、それぞれ適用される見込み。
欧州委、新たな対応策検討を発表も、ガス卸売価格の上限設定は方向性示せず
欧州委が提案する意向を示していたガス卸売価格への上限の設定(関連ブラック ジャック トランプ)に関しては、欧州委と加盟国間で意見が割れていることがあらためて浮き彫りとなった。欧州委は、域外からの輸入に依存している液化天然ガス(LNG)を含む天然ガスの卸売価格全体に対する上限価格を設定した場合、世界的なLNG獲得競争が激化する中でエネルギーの安定供給を脅かしかねないとして、ロシア産天然ガスに限定して上限を設定すべきとの立場を崩していない。一方で、ロシア産天然ガスに限定した場合、EUの天然ガス卸売価格を下げる効果は限定的とみられることから、フランスやイタリア、スペインなど、EU27加盟国中少なくとも15加盟国が天然ガスの卸売価格全体に上限を課すべきだと主張している。こうしたことから、欧州委はガス卸売価格の上限設定について、あらゆる可能性を検討すると述べるにとどめた。
欧州委はこのほかに、天然ガスの調達コストを抑えるべく、EU理事会に対して新たな戦略を提示したことを明らかにした。この中で欧州委は、ロシアのウクライナ軍事侵攻により、パイプライン経由の天然ガスに大幅なプレミアム価格が付いていることから、輸入元の国と協議を進め、プレミアム価格の制限を目指すとしている。また、欧州委は、EU域内のLNG価格がアジアなどでの価格と比べて大幅に高くなっていることを問題視。これは、欧州の天然ガス価格の指標となっているTTF(Title Transfer Facility)の性質に起因しているとして、補完的なEUの価格指標の開発を進めているとした。さらに、欧州委は、域内市場の発電用天然ガスに限定して価格制限を設定する一時的な措置を検討していることも明らかにした。ガス消費量を増加させることなく、電力価格を下げることができる水準での価格制限にする方針だ。これらの措置については、10月7日にプラハで開催が予定されている欧州理事会(EU首脳会議)の非公式会合で協議される予定だ。
(吉沼啓介)
(EU)
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