バイデン米政権、石油戦略備蓄から最大1,500万バレル追加売却、放出予定量の全てを消化
(米国)
ニューヨーク発
2022年10月20日
米国エネルギー省は10月19日、石油戦略備蓄(SPR)から1,500万バレルを追加売却することを発表した。2022年3月に発表した、石油戦略備蓄から半年間で1億8,000万バレルを放出する計画(2022年4月1日記事参照)の一環で、市場への売却は今回で7回目。今回で累積売却量は約1億8,000万バレルに達し、放出予定量の全てを消化することになる。
今回の売却入札は10月25日まで、販売契約は11月1日までに行われる予定だ。テキサス州のビッグヒルとブライアンマウンドの貯蔵施設からそれぞれ最大600万バレルと最大300万バレル、ルイジアナ州のウェストハックベリーの貯蔵施設から最大600万バレル、合計で最大1,500万バレルを12月中に放出するとしている。
米WTI原油先物価格は、直近の10月第2週で1バレル(約159リットル)当たり約89ドルと、6月のピーク時の120ドル超から25%程度下落している。しかし、OPECプラスが11月から原油の日量200万バレルの減産に合意した影響で(2022年10月6日記事参照)、9月最終週と比べると約9ドル上昇している。ガソリンの全米平均小売価格は、直近で1ガロン(約3.8リットル)3.85ドルと6月のピーク時の5ドル超から下落しているが、1カ月前の3.68ドルから徐々に上昇している。今後、寒さが厳しくなり需要が高まることに加え、OPECプラスの減産の影響もさらに表れてくることも懸念される。今回の放出はこうした影響を軽減する狙いがあるとみられるが、一連の1億8,000万バレルの放出は日量50万バレル相当とされており、効果は限定的との見方が大勢だ。
現在、米国のSPRの総在庫量は約4億バレルと、1984年6月以来の水準まで低下しており、1980年ごろのオイル・ショック以降に徐々に積み上げてきた在庫量を一気に放出したかたちだが、バイデン政権は必要に応じて、今後数カ月で大規模な追加放出を行う準備があるとしている。また、有事に備え、SPRの現在の低水準を懸念する声に対しては、原油が1バレル当たり67ドルから72ドルの価格水準になったところでの買い戻しを企図しているとしており、最初の買い戻しは2024年度ないし2025年度になるだろうとの見通しを示している。
(宮野慶太)
(米国)
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