ニーダーザクセン州議会選で国政与党SPDが勝利、緑の党とAfDも躍進

(ドイツ)

ベルリン発

2022年10月14日

ドイツ北西部のニーダーザクセン州で10月9日、州議会選挙が行われた外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。国政連立与党の3党では、中道左派の社会民主党(SPD)が同州での第1党の座を維持、環境保護政党の緑の党(Grüne)が躍進した一方で、中道右派の自由民主党(FDP)は議席を失い、明暗が分かれた。

得票率と獲得議席数PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(速報値)をみると、SPDが得票率33.4%(前回2017年選挙から3.5ポイント減)で57議席(前回から2議席増)を獲得。国政で最大野党のキリスト教民主同盟(CDU)は28.1%(5.5ポイント減)、47議席(3議席減)になった。緑の党は14.5%(5.8ポイント増)で24議席(12議席増)。極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」は10.9%(4.7ポイント増)で18議席(9議席増)。緑の党とAfDは大幅に躍進して議席を倍増させた。一方、FDPは4.7%(2.8ポイント減)と議席獲得に必要な得票率5%を割り込んだため、これまでの11議席を失う大敗を喫した。左翼党は2.7%(1.9ポイント減)と、前回と同様に議席を獲得できなかった。

公共放送ARDは10日、州議会選の結果を分析。今回有権者の投票行動に影響した問題はエネルギー供給不足や物価上昇、気候変動など、国政に関わるものだったと指摘。ただし、SPD勝利の要因は、現在の州首相ステファン・バイル氏(SPD)の支持の高さによるところが大きかったとした。また、緑の党は気候変動対策を重視しており、同党の連立政権入りを期待する層から得票した。議席を失ったFDPは、物価(特にエネルギー価格)上昇への支援策の費用が膨れる中での債務ブレーキ(注)の復活や、原子力発電所3基全ての少なくとも2024年までの稼働延長()などを主張しており、連邦政府の連立与党内におけるSPDと緑の党との意見の相違が得票率低下に影響したとみている。

ニーダーザクセン州では、前回2017年の選挙以降、SPDとCDUの連立政権となっていた。北ドイツ放送NDRは10日、第1党を維持したSPDのバイル氏が同日にこれまでの連立相手のCDUではなく、「方向性が大筋で一致する」として、緑の党と連立協議を開始したい意向を示したと報じた。緑の党も連立協議に意欲を示す一方で、自動車産業を重視するSPDとの連立交渉では、緑の党が主眼とする公共交通機関や自転車の活用を拡大するモビリティー政策が論点になるとの見方を示しているという。

同州の州都はハノーバー。世界最大級の産業技術の専門展示会「ハノーバーメッセ」の開催地だ。また同州は、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)や鉄鋼大手ザルツギッターの本拠地も擁する。

(注)財政均衡を義務付け、GDPの0.35%を超える財政赤字(新規債務)を禁じるドイツ基本法(憲法)上の規定。新型コロナウイルス禍対応のため、2020年予算以降、債務ブレーキは適用されていないが、2023年予算から適用予定。

(中村容子)

(ドイツ)

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