2050年までにCO2ガス排出を実質ゼロへ、目標を前倒し
(シンガポール)
シンガポール発
2022年10月31日
シンガポールのローレンス・ウォン副首相兼財務相は10月25日、二酸化炭素(CO2)の排出量を2050年までに実質ゼロ(ネットゼロ)とする新たな目標を発表した。同国は新しいCO2削減目標を、エジプトで11月6~18日に開催される国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)に提出する予定だ。
ウォン副首相によると、シンガポールはこれまで国別排出削減目標(NDC)として、CO2排出量が2030年に6,500万トンでピークに達するとの目標を設定していた。同国は今回、CO2排出量のピークを2030年よりも前倒しにして、2030年のCO2排出量を約6,000万トンへと削減するという新たな目標を示した。2030年のCO2排出量目標を削減したことで、2050年にCO2を実質ゼロとする目標達成が可能になるとしている。
同国は2020年2月に、COP21で採択されたパリ協定に基づく長期的な温室効果ガスの低排出型の発展のための戦略(長期低排出発展戦略)として、21世紀後半のできるだけ早い時期にCO2排出量を実質ゼロとする目標を設定していた。ウォン副首相は2022年2月発表の2022年度予算の中で、同目標達成を前倒しにして21世紀中旬までにCO2排出量の実質ゼロを達成する方針を表明していた。同副首相は今回、この目標の改定を確定したことになる。
水素発電、2050年までに電力需要の最大半分を占める可能性
また、ウォン副首相は演説の中で、脱炭素への取り組みにおいて「(エネルギー源として)低炭素の水素が次のフロンティアになる」と述べ、水素発電導入に向けたロードマップ「シンガポールの国家水素戦略(注)」を明らかにした。同副首相は水素発電の技術革新が今後も進めば、「2050年までに国内の電力需要の最大半分を水素が占める可能性」を指摘した。
同副首相は、国内のCO2排出の約4割が電力部門を占めることから、電力部門における排出削減を特に注力していく必要を強調した。同国はこれまでに、2030年までに国内の太陽電池発電設備容量を2ギガワットピーク(GWp)以上とする目標達成に向け、太陽光パネルの設置を進めている。さらに2022年6月から、ラオスの水力発電所からの電力輸入を開始している()。しかし、脱炭素に向けて、太陽光発電と電力輸入だけでは不十分で、水素のような代替燃料の必要性を説明した。
(注)「シンガポールの国家水素戦略」の詳細は、貿易産業省のホームページを参照。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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