インフレ対策支援パッケージに合意、家計向けに電力価格抑制策など
(ルクセンブルク)
ブリュッセル発
2022年10月07日
ルクセンブルク政府は9月28日、家計と企業に対するインフレ圧力を緩和させるための政策パッケージへの合意文書に署名し、詳細を発表した(プレスリリース)。合意文書は政府、ルクセンブルク雇用者協会および3つの業界団体との間で締結された。9月21日には、3日間にわたる政労使委員会による協議を経て、同政策パッケージに合意したと発表していた。
政策パッケージは、家計向け、企業向け、エネルギー転換の3つの分野に分かれており、2023年までに総額11億ユーロの支出を見込む。
家計向けの主な支援策は以下のとおり。
- 実施を延期していた賃金の物価スライド(注1)を、2023年4月に再開する。ただし、2023年中に3回目の賃金調整が行われた場合、それに伴う雇用者側の負担増について、政府が補填(ほてん)を行う。また、最低賃金も平均賃金の上昇に合わせて引き上げる。
- 2022年10月~2023年12月末までの間、家庭用ガス料金の値上げを2022年9月の平均価格比で15%増に抑制する。ただし、1時間当たりの最大流量が65立方メートルを超えるガスメーターが設置されている世帯は対象外。
- 電力消費量が2万5,000キロワット時(kWh)以下の家庭を対象として、2023年1月~12月までの間、電力価格を2022年の水準に抑制し、電力価格の安定化を図る。
- 2022年5月から導入されている、家庭用暖房向けの重油に対する1リットル当たり7.5セントの補助を、2022年11月~2023年末まで15セントに引き上げる。
- 2023年の1年間、付加価値税の基本税率を17%から16%に、中間税率(一部のワイン、燃料などが対象)を14%から13%に、軽減税率(暖房用燃料などが対象)を8%から7%に、それぞれ一時的に引き下げる。
企業向けの施策としては、再生可能エネルギーの発電事業者との長期電力購入契約の締結を促進するためのリスク軽減措置の導入(注2)や、企業のデジタルトランスフォーメーションやエネルギー転換に関する投資に対する税制優遇措置、社会保険料の前納制度の廃止などが合意された。
政府はまた、9月29日に、中小企業支援に特化した支援パッケージも発表している(エネルギー価格高騰に対する中小企業ブラック)。
エネルギー転換の分野では、ヒートポンプなど再生可能エネルギーを利用する暖房設備の導入、建物のエネルギー効率化工事などに対する補助金の増額、太陽光パネルの新規設置に係る付加価値税の減税、太陽光発電の買い取り価格の年次逓減措置の停止などについて合意された。
(注1)購買力を維持するために、生活費の上昇に合わせて、従業員の賃金を引き上げる制度。
(注2)市場価格が購入価格を下回った場合に、その差額の一部を政府が補填する制度。
(大中登紀子)
(ルクセンブルク)
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