ムハンマド皇太子、サプライチェーン強化策を発表
(サウジアラビア)
リヤド発
2022年10月24日
サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は10月23日、「グローバル・サプライチェーン・レジリエンス・イニシアチブ(GSCRI)」の立ち上げを発表した。GSCRIは、サウジアラビアを、競争優位性の推進とビジネス・レジリエンス(回復力)の向上を目指す世界の大手企業がサプライチェーンを選択する場所に同国がなることを目指すもので、2021年10月に打ち出された「国家投資戦略」の柱の1つに位置付けられていた。
同政府は、パンデミック、通商摩擦、ウクライナ問題など地政学的な状況により、世界のサプライチェーンを破壊または弱体化するとともに、商品価格が上昇し、生産と流通が混乱していると指摘する。このような情勢の中で、CSCRIは同国の地位を強化し、世界的な混乱による影響を軽減することを目的とする。
同政府は自国の利点として、(1)中東地域で最大の経済かつG20で最も急速な成長、(2)3大陸の中心に位置する戦略的立地、(3)製造業向けの主要原材料の供給力、石油・ガス・電力・再生可能エネルギーなどの価格競争力、(4)工業地域、空港、港湾などの物流インフラ、(5)デジタルインフラの進歩、などを挙げる。
さらに、持続可能性、環境保護、気候変動への対策として、多くの野心的な計画を立ち上げている。ブルー水素とグリーン水素製造や炭素回収技術の開発に関する取り組みなどを強みに、グリーン投資の面で優位性を持つことを狙う。
GSCRIは、投資家にとって同国を最適な投資環境とすることを目指す。今後のステップとして、(a)投資機会を特定・開発し、投資家へ提示、(b)多くの経済特区を設立し、投資家にとって魅力的な環境を整備、(c)国際的な企業の地域統括会社の誘致、が含まれている。さらに、幅広い規制や手続きの改革に取り組むとする。
投資環境を継続的に強化する上では、魅力的な投資機会に加え、100億リヤル(約4,000億円、1リヤル=約40円)相当のインセンティブを含む予算を計上する予定だ。400億リヤルの質の高い投資の誘致も目指す。
一方、今回の発表では、投資機会や条件などに関する具体的な言及がないため、企業の誘致の実現性を見極める上で、詳細の発表が待たれる。
(秋山士郎)
(サウジアラビア)
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