新産業戦略を発表、重点分野での新規投資には税制優遇を検討
(メキシコ)
メキシコ発
2022年09月28日
メキシコ経済省は9月20日、技術革新、国内部品調達の増加や人的資本開発を通じて、包括的成長を生み出す経済モデルを構築するため、官民の様々な経済主体を調整するための戦略「産業政策に向けて」を発表した。同戦略は、産業界のニーズに対応するため、「イノベーションと技術・科学のトレンド」「新しいトレンドに対応した人的資本の形成」「現地調達の促進」「持続可能な産業」という4つの横断軸で構成されている。
「イノベーションと技術・科学のトレンド」では、電気自動車(EV)やグリーン水素自動車などの生産、全業種での5G(第5世代移動通信システム)の導入促進などを目指している。2つ目の「新しいトレンドに対応した人的資本の形成」では、国家産業の柱としてSTEM(科学、技術、工学、数学)分野の人材キャリア支援を促進する。3つ目の「現地調達の促進」では、中小企業や大企業へのインセンティブ付与を通じて国内生産を増加させるとともに、グローバルバリューチェーンへのメキシコ企業の参画を促進し、「メード・イン・メキシコ」ブランドを再び立ち上げることを目標としている。最後の「持続可能な産業」では、2030年までにメキシコで生産される自動車の50%に、ゼロエミッション技術を採用することを掲げている。
また、経済省と財務省の共同記者会見によると、ゼロエミッション車の生産や国内での半導体製造促進を含む5つの戦略的分野も決定した(「レフォルマ」紙9月21日)。5つの戦略的分野は、「食品産業」「電子・電気」「EV」「クリエーティブ産業」「医療医薬品関連サービス」。これら5分野は、先進国の取り組みを研究し、メキシコの特徴を分析した上で、現在および将来のメキシコ経済の競争力を高めることを目的として決定された。
この戦略により、エネルギー転換を促進するべく、EVやグリーン水素自動車などゼロエミッション車の製造が推進される。さらに、ハイテク企業の移転を活用とした技術移転の流れを促進することに対して、インセンティブを与えることを視野に入れている。具体的には、メキシコの半導体部品メーカーのグローバルサプライチェーンへの参入拡大、メキシコで組み立て・生産される自動車の国内調達比率上昇のために共通の目標を確立することを目的としている。
大蔵公債省のガブリエル・ヨリオ次官は、2023年の経済対策にはない税制優遇策を策定中であることを公表した(「レフォルマ」紙9月21日)。「産業政策に向けて」の中においても、大蔵公債省の支援により、上記の対象分野における企業の新規投資に対して税制優遇措置を付与することが明記されている。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
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