ブリンケン米国務長官、中国新疆ウイグル自治区の人権状況の国連報告書を歓迎
(米国、中国)
ニューヨーク発
2022年09月05日
米国のアントニー・ブリンケン国務長官は9月1日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が8月31日に発表した中国の新疆ウイグル自治区の人権状況に関する報告書を歓迎する声明を発表した。OHCHRの報告書は、新疆ウイグル自治区の人権に関わる懸念を評価したもので、中国政府によるテロや過激派の対策という名目でウイグル族らへの深刻な人権侵害が行われていると記した。
ブリンケン国務長官は声明で、OHCHRの報告書は「中国政府によるウイグル族とその他の民族的・宗教的少数派グループに対する恐ろしい扱いと虐待を厳然と説明している」と指摘した。また、同報告書は中国当局がウイグル族らに行っている「ジェノサイドと人道に対する罪に関するわれわれの深刻な懸念を深め、再確認」するものだと述べた。その上で、今後もパートナー国などと緊密に連携し、人権侵害の被害者のために正義と責任を追及し続ける考えを示した。
OHCHRの報告書をめぐっては、中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC、注)も9月1日、国際社会による責任追及を求める声明を発表した。CECCで委員長を務めるジェフ・マークリー上院議員(民主党、オレゴン州)と共同委員長のジェームズ・マクガバン下院議員(民主党、マサチューセッツ州)は声明で、国連人権理事会と加盟国に対し、中国の人権慣行の監視を求めた国連の独立専門家による2020年の勧告を実行するよう求め続けると表明。また、各国政府に対し、米国で2021年末に成立した「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」に類似した政策と法令を実施するよう促した。UFLPAは新疆ウイグル自治区が関与する製品の米国への輸入を原則禁止しており、輸入禁止措置が2022年6月21日に施行された(2022年8月5日付地域・分析レポート参照)。国務省もメンバーとなっている米国政府の強制労働執行タスクフォース(FLETF)はUFLPAの執行戦略で、新疆ウイグル自治区で強制労働により生産された製品の貿易を禁止するためにパートナー国に積極的に関与する方針を示している。
世論調査では、米国民は米国による人権外交をおおむね支持している結果も出ている。米国シンクタンクのシカゴ・グローバル評議会が8月31日に発表した世論調査結果によると、米国の成人の過半(56%)が「中国による民族的・宗教的少数派グループの扱いは中国の内政問題」という考えに反対した。世界における人権と民主主義の促進で米国が果たすべき役割については、「指導的な役割」(45%)と「支援的な役割」(46%)を合わせて91%が何らかの貢献を求めており、「役割を果たすべきではない」は9%にとどまっている。
(注)議会上下両院の議員と、大統領により指名された政府高官で構成する委員会。中国の人権と法の支配の状況を監視し、大統領と議会に年次報告書を提出する義務を負う。
(甲斐野裕之)
(米国、中国)
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