企業の温暖化対策、G7で後れを取る日本、CDP報告
(世界、ドイツ、イタリア、米国、カナダ、日本、欧州、北米、アジア、G7)
国際経済課
2022年09月08日
英国に本部を置く国際的なNGOであるCDPは9月6日、世界の主要企業の温室効果ガス(GHG)排出削減目標の設定に対して、米国コンサルティング会社オリバー・ワイマンとともに評価した結果を発表した。
同結果では、世界の主要企業のGHG排出削減目標が、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26、2021年10月31日~11月13日開催)で明記された「世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑制する」との目標(以下、1.5度目標)から、どれだけ乖離しているかを、気温を使ってスコア評価している(注)。単純化すれば、「1.5度」に近い国は、1.5度目標に沿う排出削減目標を掲げる企業が多いことを示す。
CDPによると、先進7カ国(G7)の中では、「1.5度」からの乖離が最も小さい国は、「2.2度」のドイツとイタリア、最も大きい国は「3.1度」のカナダだった。日本と米国はカナダの次に大きい「2.8度」で、G7平均の「2.7度」より大きかった。
分野別では、発電は、欧州が「2.3度」、北米が「2.8度」、アジアが「3.0度」。製造業は、欧州が「2.3度」、北米が「2.6度」、アジアが「3.1度」だった。素材は、欧州が「2.7度」、北米が「2.8度」、アジアが「3.0度」となっており、欧州企業でも気候変動対応が遅れ気味だ。北米企業は化石燃料で「3.1度」と乖離が大きい。
アジアだけでなく、先進国のG7ですら、いずれの国の企業も、1.5度目標に沿っていないとの今回の分析結果を踏まえ、CDPは「2022年11月に(エジプトの)シャルム・エル・シェイクでCOP27が開催されるが、G7などにおける気候変動対応に向けた取り組み(climate ambition)はCOP27のビジョンから遠くかけ離れたものとなっている」と表現している。
(注)1.5度目標に沿った温室効果ガス(GHG)排出削減目標を持つ企業を「1.5度」、目標を持たない企業を「3.2度」とするなど、本籍地を置く国ごとに集約して、国のスコアとして算出。同スコアに、各国政府(もしくはEU)が掲げる排出削減目標は反映されていない。企業の排出は原則、自社(スコープ1、2)だけでなく、サプライチェーン(スコープ3)も含む。ただし、国ごとに集約する際、排出量の大きい分野に属する企業ほど、国ごとのスコアへの反映の比重を大きく設定している。
(古川祐)
(世界、ドイツ、イタリア、米国、カナダ、日本、欧州、北米、アジア、G7)
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