FDA、米スタートアップが開発したテストステロン補充経口薬を承認
(米国)
アトランタ発
2022年08月04日
米国の創薬スタートアップのマリウス製薬は8月2日、同社が開発したテストステロン補充経口薬「カイザトレックス」が米国食品医薬品局(FDA)に承認されたと発表した。現在、テストステロン欠乏症の治療は注射による補充療法が広く行われているが、同社の新薬は経口ソフトジェルなのが特徴。朝・夕に毎日服用することで、1日におけるテストステロンの自然な分泌のリズムをより忠実に模倣することが可能だという。
マリウス製薬は2017年設立の創薬スタートアップで、経営陣7人のうち4人が製薬大手グラクソ・スミスクラインの元社員だ。同社の所在地ノースカロライナ州の州都ローリーは、リサーチ・トライアングル・リージョンと呼ばれる地域の中心都市。同地域は全米4位のライフサイエンス産業クラスターで(2022年6月30日記事参照)、600社以上の関連企業が活動している。
男性ホルモンの1つのテストステロンには、生殖機能の向上以外にも、脳の健康と認知機能の向上、筋肉の発達、脂肪の代謝、骨の強度向上、血管機能の調節などの働きがあるとされる。同社は、2型糖尿病や肥満などテストステロン欠乏症の影響を軽減することで患者の機能的な生活の改善を目指し、テストステロン欠乏症の治療法に特化して研究・開発に取り組んできた。
今回FDAの承認を得たカイザトレックスは、特定の病状によりテストステロン値が低い、または全くない成人男性の治療を目的とした経口ソフトジェルカプセル状の処方薬。リンパ系を介して吸収され、肝臓毒性を回避できるという。また、経口薬のため、従来の治療法の筋肉注射の副反応の問題が生じない。同社の最高経営責任者(CEO)シャリン・シャー氏は「非常に多くの男性がテストステロン欠乏症に日々悩まされつつも、治療を受けずにいる。FDAが承認したカイザトレックスは、安全性と有効性が実証された経口薬としての新たなオプション」と語っている。同薬は5週間ほどで製品化される予定。
なお、同薬は、加齢など特定の病状なしにテストステロン値が低い場合には服用対象とはならず、女性の服用も想定されていない。
(高橋卓也)
(米国)
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