米上院民主党議員、「インフレ削減法案」でEV税額控除の見直しを提案
(米国、カナダ、メキシコ)
ニューヨーク発
2022年08月04日
米国の上院民主党のチャック・シューマー院内総務(ニューヨーク州)とジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)は、7月27日に合意した「インフレ削減法案」(2022年8月2日記事参照)の中で、電気自動車(EV)購入の際の税額控除に関する新たな提案を盛り込んだ。EV税額控除に関しては、下院民主党が2021年9月13日に発表した歳入法案で、労働組合のある米国内の拠点で組み立てられた車両のみを対象とする提案などを行い、非組合メーカーを中心に見直しを求める声が上がっていた(2021年9月16日記事参照)。
今回合意された税額控除の対象は、北米(米国、カナダ、メキシコ)で最終組み立てが行われ、2023年1月1日以降に購入される車両。控除額の上限は現行の歳入法に定められている7,500ドルで据え置かれたが、その内容については、現在の基礎控除2,500ドルと車両のバッテリー容量に応じた上限5,000ドルから修正が加えられた。具体的には、コバルトやリチウムといった重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で抽出あるいは処理されるか、北米でリサイクルされている場合に3,750ドルの控除が適用され、その割合は2027年販売以降に80%となるよう段階的に設定されている。さらに、バッテリー用部品のうち、50%が北米で製造されている場合も3,750ドルの控除が適用され、2029年以降には100%になるよう定められている。
税額控除とは、支払うべき税金から控除額を直接差し引く制度。今回の法案で定められた控除を受けられる購入者の収入の上限は、配偶者との合算で申告する場合30万ドル、世帯主で22万5,000ドル、いずれにも当てはまらない場合で15万ドルとなっている。また、車両価格の上限は、バン、スポーツ用多目的車(SUV)、ピックアップトラックの場合それぞれ8万ドル、乗用車を含むその他の車両で5万5,000ドルに設定されている。
2021年9月の歳入法案に盛り込まれていた、労働組合のある米国内の拠点で組み立てられた車両の購入に対する4,500ドルの控除額の上乗せは、今回の法案では削除された。さらに、現行の歳入法でメーカーごとに定められている販売台数20万台の上限も撤廃された。これに関して、既にゼネラルモーターズ(GM)、テスラ、トヨタは上限に達しており、2022年6月13日にはトヨタと米系メーカー3社が、米国議会に対し上限撤廃を要請する共同書簡を提出していた(2022年6月15日記事参照)。
(大原典子)
(米国、カナダ、メキシコ)
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