原子力国営企業の上半期純利益は3.2倍、3、4号炉と小型モジュール炉計画も進む
(ルーマニア)
ブカレスト発
2022年08月31日
ルーマニアでチェルナボダ原子力発電所を運転する国営企業、ヌクレアエレクトリカ(Societatea Nationala Nuclearelectrica、以下SNN)は8月10日、2022年上半期決算(1~6月)を発表した。純利益は12億2,079万レイ(約341億8,212万円、レイは通貨単位レウの複数形、1レウ=約28円)に達し、前年同期比で3.2倍に増加した。ブカレスト証券取引所の同12日の公告によると、1号炉の計画運休により発電量は2.3%減少したが、売電収入が30億8,908万レイと2.3倍に増加したことなどが貢献した。
同社のメラニア・アムザ副社長は、4月19日のEnergy Industry Review誌のインタビュー(注)で、同社の原子力発電所3、4号炉の新設、1号炉の30年間の運転期間の延長と修復、ピテシュティ東部のドイチェシュティで欧州初の建設を計画している小型モジュール炉(SMR)、トリチウム除去施設の建設などの計画を話した。アムザ副社長は、ルーマニアの国家計画「PNIESC」では、2030年に二酸化炭素(CO2)排出量を2005年比で55%に削減、エネルギーの輸入依存率を2030年までに17.8%にまで引き下げることなどが定められていることを紹介。EUタクソノミーに原発が含まれ、SMRには発電だけでなく水素が製造できるメリットもあることから、EUの脱炭素目標達成に大きく貢献できるとした。アムザ副社長は、CANDU(Canadian Deuterium Uranium、カナダ重水素ウラン)を採用している同原発はこれまで1、2号炉だけでCO2を年間500万トン削減し、1号炉が2029年に再稼働、新設の3、4号炉が2031年に稼働、さらにSMRが2028年に稼働すれば、国内の再生可能エネルギー全体に対する原発の割合は66%に達すると述べた。
同社は、アルジェシュ県ミオベニで核燃料も生産しており、2022年上半期に製造、管理、受け入れた核燃料棒の数は5,272本だった。
世界原子力協会(WNA)によると、3、4号炉建設計画をめぐっては、当初計画策定後も入札が進まなかったところ、2013年11月にSNNと中国広核集団(CGN)が基本合意書(LOI)を締結した。翌2014年、CGNの子会社である中広核工程(CNPEC)が中国工商銀行の65億ユーロを財源に、CGNが株式の過半を保有する条件で建設する協定を締結した。しかし2020年2月、ルーマニア政府はCGNとの関係解消を表明。同年10月、米国政府との間で3、4号炉建設のほか1号炉改修の協定案を締結した。同年12月には、両国政府は米国輸出入銀行から70億ドルの資金を得ることで最終合意した。2021年時点で3号炉の工事進捗は52%、4号炉は30%となっている。
(注)同誌から引用許可取得済み。
(西澤成世)
(ルーマニア)
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