製造業の新規受注が減少、景気後退の懸念高まる
(ドイツ、ウクライナ、ロシア)
ベルリン発
2022年08月12日
ロシアによるウクライナ侵攻、エネルギー価格の高騰、サプライチェーンの混乱などの影響を受け、ドイツ経済の先行きに対する悲観的な見方が広がっている。
ドイツ連邦統計局と経済・気候保護省は8月4日、6月の製造業新規受注指数(2015年=100)を105.7(季節調整済み・実質、速報値)と発表した。前月比で0.4%減、前年同月比では9.0%減となった。国外からの受注が減少し、特にユーロ圏外からの新規受注が前月比4.3%減と急減し、全体を押し下げた。業種別でみると、構成比の高い「自動車・自動車部品」と「機械」における受注は、前月比で0.1%減、0.4%減といずれも減少幅は小幅にとどまったが、「その他の輸送機器」が25.6%減と大幅減少した。一方で、医薬品は9.2%増、化学製品は1.1%増、電気機器は0.6%増と伸びた。
経済・気候保護省は、ウクライナ侵攻や天然ガス不足の懸念による不確実性の高まりを受け、需要は引き続き低調に推移していると指摘。さらに、景況感の冷え込みを受け、製造業の景気の先行きに慎重な見通しを示した。
ドイツ商工会議所連合会(DIHK)のユップ・ツェンツェン経済・成長・企業調査ユニット長は8月8日、工業製品の需要を押し下げている要因は、サプライチェーン混乱の継続、高インフレ率、エネルギー価格上昇だと指摘し、「これらの状況は、輸出志向の強いドイツ経済に明るい見通しをもたらしていない」と述べた。
景況感、今後の見通しを示す期待指数も悪化
ifo経済研究所は7月25日、7月のドイツ企業景況感指数(2015年=100)を発表した。同指数は88.6と、前月の92.2から3.6ポイント低下し、2カ月連続で悪化した。景況感についてのDI値(注)は、4部門全てで大幅に落ち込んだ。製造部門は前月の0.0からマイナス7.1、サービス部門は前月の10.9から0.9、流通部門は前月のマイナス14.7からマイナス21.6、建設部門は前月のマイナス9.7からマイナス17.0へと、いずれも大きく下落した。
また、今後6カ月の見通しを示す期待指数も80.3と、前月の85.5から5.2ポイント低下し、新型コロナ禍初期の2020年5月(81.6)以来の低水準に達した。期待についてのDI値も、4部門全てで大幅に落ち込んだ。製造部門はマイナス31.0と、前月のマイナス21.5から9.5ポイント減少した。
エネルギー価格の高騰と天然ガス不足の懸念が経済に重くのしかかっているとして、クレメンス・フュスト所長は「ドイツは景気後退の瀬戸際にある」と懸念を示した。
(注)Diffusion Indexの略。ビジネスの状況を「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いた値。
(中村容子)
(ドイツ、ウクライナ、ロシア)
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