政府がエネルギー確保策を発表、冬季の天然ガス安定供給目指す

(ドイツ、ウクライナ、ロシア)

デュッセルドルフ発

2022年08月01日

ドイツ経済・気候保護省は721日、天然ガスの確保を目指すさらなる対策パッケージを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。既に数多くの対策を過去数カ月で講じており、その進捗状況に関しては報告書を3回発表している(2022729日記事参照)。同パッケージ発表の背景には、ドイツとロシアをつなぐ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」経由の天然ガス供給が定期点検のため711日以降停止され、721日に再開されたものの、ガス供給量が最大容量に比べて低い水準にとどまっていることにある(2022年7月25日記事参照)。

同パッケージは、3つの重点項目で構成されている。まず、ドイツ国内の天然ガス貯蔵施設の最低貯蔵率に関しては、既存の法定貯蔵率(202244日記事参照)の引き上げや新たな法定貯蔵率の導入を以下のとおり行う。

  • 202291日時点:75%(新たに導入)
  • 2022101日時点:80%から85%に引き上げ
  • 2022111日時点:90%から95%に引き上げ

なお、貯蔵率達成のためには、ガス供給量が少ない場合でも貯蔵施設のガスは使用せず、継続的な充填(じゅうてん)を目指していく。

2に、発電分野での天然ガスの消費量削減に向け、すでに関連法の改正などを完了しているため、今後、現在停止中の石炭火力発電所を2023430日まで稼働させていく。これに加え、現在停止中の褐炭火力発電所を2022101日から再稼働するための法整備も準備中で、再稼働に対して欧州委員会の承認を取得中だ。また、天然ガスの一層の消費量削減に関する政令も準備している。発電分野でさらにガスを節約する必要がある場合に施行されるが、社会・経済システムや安定供給の観点から重要とされた天然ガス火力発電所は対象外となる。このほか、燃料供給に必要な鉄道輸送能力確保のため、デジタル・交通省と経済・気候保護省は緊密に協力する。さらに、再生可能エネルギー分野に関しては、バイオガス製造や太陽光発電に関する法改正が予定されている。

3に、エネルギー効率化や省エネルギーに向けた措置だ。産業分野では、天然ガスのオークション制度の導入(202274日記事参照)や企業への節約を促す。また、6カ月の期限付きの政令を制定し、公共施設やオフィスビルの廊下や玄関、ホールなどの人が普段あまりいないスペースでは暖房を使用させない予定。一般住宅においては、天然ガスによる自宅での温水プールが禁止されるほか、賃貸住宅の一定の室温維持義務が一時的に停止される予定。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、ウクライナ、ロシア)

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