米ジョージア州で中絶禁止法が施行、注目される映画産業の対応

(米国)

アトランタ発

2022年07月22日

米国連邦控訴裁判所は720日、ジョージア州の中絶禁止法の施行を差し止めていた連邦地方裁判所の命令を覆し、同法の即時発効を認めた。今回の判断は、624日に連邦最高裁判所が、女性の人工妊娠中絶権を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を破棄した(2022年6月27日記事参照)ことを踏まえたもの。

ジョージア州の中絶禁止法は「ハートビート法」とも呼ばれ、医師が胎児の心臓の拍動を確認できる妊娠約6週目以降の中絶を禁じている。2019年に州議会で同法が成立し、20201月の施行が予定されていたが、米国自由人権協会などの請求を受け、連邦地方裁判所は同法の施行を差し止め、20206月には違憲判決を下していた。

ジョージア州は、エンターテインメント産業向けに税優遇措置を設け、映画やテレビなどの撮影・製作誘致に積極的に取り組んでいる。「南部のハリウッド」とも呼ばれ、関連産業への従事者は約4万人に上る。同州商務省の発表によれば、2021年度には映画、テレビ、コマーシャル、ミュージックビデオなどを含む366本の作品が同州で撮影された。現在(721日時点)も、ディズニー、ネットフリックス、アマゾンなどが34作品の撮影を行っている。

2019年にジョージア州で中絶禁止法が成立した際、ディズニーやネットフリックスなど複数の業界大手企業が、同法が施行された場合にはジョージア州で撮影を継続するのは難しいとの考えを表明していた。税の優遇措置が大きいため静観するとの見方もあるが、今後、これらの企業の対応によっては州経済に影響を及ぼす可能性が出てくる。202211月に実施される州知事選挙で、現職のブライアン・ケンプ知事(共和党)に挑む民主党候補のステイシー・エイブラムス氏は、同法を支持したケンプ知事を非難する一方で、撮影ボイコットは避けるよう映画関係者に対して呼び掛けている。

(高橋卓也)

(米国)

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