憲法改正を問う国民投票が実施、賛成9割超
(チュニジア)
パリ発
2022年07月28日
チュニジアで7月25日、憲法改正案の賛否を問う国民投票が実施された。翌26日、高等独立選挙委員会(ISIE)により暫定結果が発表され、賛成が94.5%、反対が5.4%で、賛成が過半数を獲得した。投票率は30.5%にとどまったが、投票率の下限は法律で定められていないことから、同憲法改正案は承認されることになる。
チュニジアでは2014年の憲法改正以来、大統領が外交および安全保障、首相が内政を担うことが定められていた。しかし、今回の国民投票で新憲法案(2022年7月11日記事参照)が承認されたことにより、大統領が行政府の長を務めることになったほか、首相を含む閣僚の任命権や議会の解散権が大統領に移る一方、大統領の罷免に関する規定がなくなるなど、大統領の権限が大幅に強化される格好だ。
今回、投票率が3割と低迷した主因として、反対派のボイコットが挙げられている。新憲法案の作成過程は民主性に欠けているほか、内容的に大統領の権限を強めるものだとして、最大政党のイスラム保守派「アンナハダ」に加え、共和党や民主党などからなる「反国民投票全国キャンペーン」、小政党や市民団体などで形成される「国民救済戦線(FSN)」、ベン・アリ政権時代への復古を目指す反イスラム派「自由憲政党」といった4つの異なる反対派がボイコットを呼びかけた。また、国民の最大の関心が新型コロナウイルス感染拡大やウクライナ情勢で悪化している経済問題にあり、憲法改正にはないことも投票率低下の要因になったと報じられている。
今回の投票結果を受け、EUは7月27日付のプレスリリースで、「国民投票の暫定結果とその投票率の低さに注目している。革命の成果である民主的プロセスを成功させ、今後、チュニジアが実施する主要な政治および経済的改革には、政党や市民社会を含む政治勢力間の幅広いコンセンサスが不可欠で、それがあって初めて改革の正当性と持続可能性が保証される」として、2022年12月に予定されている議会選挙の民主的な遂行の重要性を強調するメッセージを送った。
(渡辺智子)
(チュニジア)
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