米国債の国外保有残高、5月は7兆4,216億ドルで3カ月連続減、金利上昇による債券離れ進む
(米国)
ニューヨーク発
2022年07月27日
米国財務省が7月18日に発表した証券投資統計によると、5月の米国外投資家による米国債保有残高は前月比340億ドル減の7兆4,216億ドルで、3カ月連続の減少となった。2022年に入ってからの連邦準備制度理事会(FRB)の急激な金融引き締め姿勢によって金利は上昇し、債券価格は下落しており、これ以上の損失を回避しようとした売り圧力の影響が続いている可能性がある。
国別保有残高をみると、1位の日本が1兆2,128億ドルだが、2021年11月の1兆3,286億ドルからは1,000億ドル以上減少しており、2020年1月以来の低水準となった。2位の中国は9,808億ドルで、12年ぶりに1兆ドルを割り込んだ。減少は6カ月連続で、2021年11月の1兆808億ドルから約1,000億ドル減少している(添付資料図参照)。中国については、長引く米中対立から意図的に米国債保有を減らし、金融分野の米国依存を低下させているという指摘もある(「日本経済新聞」電子版7月19日)。
債券価格下落の影響は国債市場にとどまらない。ニューヨーク連邦準備銀行が6月に公表を始めた「社債市場ディストレス指数(CMDI)」によると、債券市場の投資環境は2022年から悪化しており、6月24日時点の投資環境指数は0.36と、2020年10月以来の高水準となっている。また、米国最大の公的年金基金のカリフォルニア州公務員退職年金基金(カルパース)が7月20日に発表した運用速報値によると、6月期の投資収益率はマイナス6.1%で、2009年のリーマン・ショック時以来のマイナス値となったという。前期から株式がマイナス13.1%だったほか、債券がマイナス14.5%だったことを主な要因としており、カルパースで最高投資責任者を務めるニコル・ムジッコ氏は、株式と債券ともに急激に下落する市場環境の中で、伝統的な分散投資戦略は効果を発揮しなかったと述べている。
FRBをはじめとする各国の中央銀行による金利引き上げが引き続き見込まれることから、今後の債券市場の軟調が予想される。一方で、世界的な景気後退も予想されていることから、金利上昇圧力は最近になってやや弱まっており、一部の投資家は債券買いに転じているとの指摘もある(ロイター7月18日)。社債などの債券は非金融企業にとって主要な資金調達先の1つであることから、金利や債券価格など債券市場の動向に引き続き注視が必要だ。
(宮野慶太)
(米国)
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