バイデン米政権、石油戦略備蓄から2,000万バレル追加放出、ガソリン価格はピークから15%超下落
(米国)
ニューヨーク発
2022年07月28日
米国エネルギー省は7月26日、石油戦略備蓄(SPR)から最大2,000万バレルの追加売却を行うことを発表した。2022年3月に発表した、石油戦略備蓄から半年間で1億8,000万バレルを放出する計画(2022年4月1日記事参照)の一環で、市場への売却は今回で5回目、累積売却量は約1億5,000万バレルに達しており、予定量の8割を超えてきている。
今回の売却入札は8月2日から開始され、最長8月11日まで行われる。入札者には、9月16日から10月21日までの期間に合計で最大2,000万バレルの原油が供給されるとしている。
米WTI原油先物価格は、世界的な景気後退(リセッション)への懸念などを背景に、6月ピーク時の1バレル(約3.8リットル)120ドル超から、7月半ばには100ドルを切る水準まで15%超下落している。これに伴い、ガソリンの全米平均小売価格も6月ピーク時の1バレル5ドル超から、7月26日には4.33ドルまで下落、6月14日以降は連日下落している。しかし、ジョー・バイデン大統領は「下落しているが、十分ではない」「まだ高すぎる」と述べており(ブルームバーグ7月22日)、11月の中間選挙を前に、ガソリン高対策にさらに取り組む姿勢を今回の追加売却発表によりアピールしたかたちだ。
一方で、累次の市場放出により、米国のSPRの総在庫量は約4億8,000万バレルと37年ぶりの低水準まで減少している。これに対しては、バイデン政権は2023年度以降にSPR積み増しのために原油を買い戻す措置をすでに発表しており、今後も引き続きガソリン価格を引き下げるための追加売却など対応を継続することができるとしている。しかし、SPRは、今回のような市場価格安定のための市場放出用に備蓄されるものではなく、本来は有事など緊急対応用に備蓄されるもので、長期にわたるSPR量の水準低下は緊急時への対応を不安定化させ得る。ウクライナ情勢が長期化し、原油需給も不安定な中で、今後、円滑にSPR在庫量積み増しのための原油買い戻しができるかという懸念もある。2022年3月に計画したSPR備蓄放出をおおむね完了しつつある現在、今後も市場価格安定のためのSPR放出を続ける姿勢をバイデン政権は示唆しており、ガソリン価格が下落し始める中、どこまでこうした対応を続けるか、11月の中間選挙後の対応が注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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