医療系インキュベーターが支えるヘルステック企業
(ブラジル)
サンパウロ発
2022年07月13日
ジェトロは6月23日、ブラジルのサンパウロ市内に2017年に設立された医療系インキュベーターのエレッツビオ(Erez Bio)を訪問した。
エレッツビオは、ブラジルで60年以上の歴史を持つ主に富裕層向け医療施設のアルベルトアインシュタイン病院のイノベーション部門。同病院は、国内最大規模の病院であるとともに、米週刊誌「ニューズウィーク」による「世界の優良医療機関2022」で第34位を獲得するラテンアメリカ有数の優良医療機関だ。
エレッツビオはブラジル全土のテクノロジー企業や製薬研究機関、大学、スタートアップ企業などとパートナーシップを組み、業界に革新的な技術やブラック ジャック ランキング開発・共同開発などをもたらすプロジェクトをサポートしている。その結果、エレッツビオは「2021年ブラジルにおける最もイノベーティブな企業(組織)」ランキングの第6位に選ばれた。
現在、エレッツビオには47社のヘルステック企業が入居しており、ブラジルの医療環境を取り巻く社会課題や、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて変革した医療業界に貢献する技術を提供する。
入居企業のグリック(Glic)は、糖尿病患者の体調管理アプリケーションを提供する。国際糖尿病連合(IDF)によると、ブラジルは糖尿病患者数が世界第6位、若年層の糖尿病患者数では世界第3位となっている(注1)。グリックは、ブラジルでは1,000人当たり1割の糖尿病患者がいるとしている。そこで、同社のアプリケーションを用いることで、適切な食習慣、薬物治療やインシュリン投与のタイミングなどをスケジュール管理し、糖尿病の悪化による心筋梗塞や合併症リスクを軽減させることに成功しているという。
栄養管理士とのオンライン相談や、食事の評価、レシピ提供など栄養管理のプラットフォームアプリを提供するエヌツービー(n2b)は、当地大手ジムのスマートフィットをはじめ、健康増進を目的とする企業へサービスを提供している(注2)。10万件以上の栄養管理に関するカウンセリングや50万以上の生体インピーダンス法(注3)を利用した体組成計の実績を作り、利用者の健康維持、栄養管理に貢献する。
新型コロナ禍の中、ブラジルの健康志向はさらに高まる一方、糖尿病患者へのケアは続いている。新たな発想でのヘルステック企業の活躍が期待される。
(注1)IDFの Daibates Atlas 2021 10th editon によると、2021年時点で、ブラジルでは20~79歳の糖尿病患者数が約1,600万人で世界第6位。0~19歳の新規糖尿病患者数(発症数)は8,900人で世界第3位。
(注2)同社は現在、スマートフィット傘下に入っている。
(注3)体に微弱な電流を流し、その際の電気の流れやすさ(電気抵抗値)を計測することで体組成を推定する方法。
(松平史寿子)
(ブラジル)
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