ウクライナ情勢を受け、石炭火力発電所の稼働を延長
(英国)
ロンドン発
2022年07月08日
英国の系統運用事業者ナショナル・グリッドESO(NGESO)と英国発電大手ドラックスは7月6日、ロシアによるウクライナ侵攻などを受け、今冬にかけてのエネルギー安全保障強化のため、英国政府の要請を受けて石炭火力発電所の稼働を一時的に延長することに合意した〔ドラックスの7月6日付発表、およびクワシ・クワルテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)相がウィル・ガーディナー・ドラックスCEOに宛てた同日付書簡〕。
今回対象となる発電所は、ドラックスのヨークシャー発電所にある2つの石炭火力発電ユニット。2022年9月末での閉鎖が予定されていたが、今回の合意に伴い、2023年3月まで稼働が延長されることとなった。ドラックスは最大約40万トンの追加石炭を調達し、NGESOから指示された場合にのみ稼働する。
クワルテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略相は、同日付のツイッターで「ロシアが欧州各地へのガスを遮断している中、今回の措置は賢明な予防策といえる。私はエネルギー担当相として、この冬に十分な供給を確保する責任がある」と述べた。
ドラックスの火力発電ユニットは、2023年の閉鎖後、2027年までに炭素回収・貯留型バイオマス発電(BECCS)プロジェクトとして再開発することが計画されている。
エネルギー安全保障を目的に、政府の要請で火力発電所の稼働を延長する動きは、フランス・エネルギー大手EDFの英国子会社EDFエナジーのウエストバートンA発電所でもみられる。同発電所も2022年9月末に廃止予定だったところ、2023年3月まで稼働を延長する旨を2022年6月14日に発表した。ドラックスとEDFエナジーはともに、自社の火力発電所の稼働延長について、あくまでエネルギー安全保障の支援のための緊急的措置で、延長期間には商業運転はしないとしている。
(菅野真)
(英国)
ビジネス短信 3f35fa305036227c