世界規模でインフレ継続、一次産品価格は高水準
(世界)
国際経済課
2022年07月11日
OECDは7月5日、加盟国全体の5月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で9.6%上昇したと発表した。4月の9.2%から上昇幅が拡大した(2022年6月6日記事参照)。食料(4月:11.5%、5月:12.6%)、エネルギー(32.9%、35.4%)ともに、物価指数の上昇の勢いが増した。主要先進国と新興国で構成するG20全体でも、5月のCPI上昇率は8.8%で、4月(8.5%)から加速した。
穀物価格、6月は前月から低下も、高水準続く
OECDの5月のCPI発表の同日、世界銀行は6月の一次産品価格指数(名目ドルベース、2010=100)指標を公表した。エネルギー(5月:160.93、6月:171.24)は前月から上昇したのに対し、非エネルギー(133.44、128.04)は低下した。非エネルギーのうち、穀物(169.04、157.93)や植物油(165.21、155.77)が下落し、食料(159.04、151.50)も低下した。
穀物価格の下落は、国連食糧農業機関(FAO)が7月8日に発表した6月の食料価格指数(FFPI、2014~2016=100)からも見て取れる。FFPIを構成する穀類は166.3と前月(173.5)から低下した。FAOは、穀類のうち小麦の国際価格が下落した点について触れ、「北半球での新規収穫による季節的な入手可能性や、カナダを含む幾つかの主要生産国の作況改善、ロシアでの生産見通しの向上、世界規模の輸入需要の鈍化によって、6月は減少した」と指摘した。
穀類を含むFFPIは3月をピークに下落傾向にあるが、過去と比較すると引き続き高い水準にある(添付資料図参照)。FAOのマキシモ・トレロ・チーフエコノミストは「世界価格を高騰させた要因はまだ残っている」とし、「旺盛な世界需要、一部の主要国での悪天候、生産・輸送コストの高騰、新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンの混乱、さらに、ウクライナで続く紛争に起因する不確実性が重なっている」とした(7月8日付FAOニュース資料)。
FAOがFFPIと同日に発表した穀物の需給見通しによると、2022年の世界の穀物生産量は27億9,150万トンと、前回6月3日発表(27億8,450万トン)から700万トン引き上げられた。粗粒穀物の生産見通しが640万トン引き上げられた一方で、小麦生産の見通しは約50万トン引き下げられた。FAOは小麦について、乾燥が続いているEUでの収量見通しが悪化などを指摘した。
(朝倉啓介)
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