欧州議会、天然ガスと原子力を持続可能な活動とするEUタクソノミー委任規則案を承認
(EU)
ブリュッセル発
2022年07月08日
欧州議会は7月6日の本会議において、持続可能な経済活動を分類する「EUタクソノミー」規則(注1)において、一定の条件で天然ガスおよび原子力による発電などを持続可能な経済活動に含めるとする委任規則案(2022年2月4月記事参照)に対する反対決議を賛成278票、反対328票で否決した(プレスリリース)。これにより、欧州議会は委任規則案を実質的に承認したことになり、今後、EU理事会(閣僚理事会)で委任規則案を不承認とすることは困難とみられることから(注2)、委任規則案は2023年1月1日から施行されるとの見方が濃厚となった。
タクソノミーにおける天然ガスと原子力の扱いについては、原子力への依存度が高いフランスなどは原子力を、原発廃止を掲げるドイツや石炭利用の削減が課題となっている東欧諸国などは移行期のエネルギー源として天然ガスを、それぞれタクソノミーに含めることを主張。加盟国ごとの異なるエネルギーミックスを背景に加盟国間の意見が大きく割れる中で、欧州委は2022年1月、最終的には天然ガスと原子力をともに「気候変動の緩和」に実質的に貢献する「グリーン」な経済活動に分類する方針を発表した(2022年1月4日記事参照)。しかし、欧州委の諮問機関は同月、委任規則案の条件の下であっても、天然ガスは「グリーン」とは程遠く、原子力も持続可能とはいえないとする見解を発表するなど(2022年1月25日記事参照)、その後も意見の対立は続いていた。
また、ロシアによるウクライナ侵攻を機に、天然ガスを含めたロシア産化石燃料への依存からの早期脱却を目指すとの合意がされたことにより(関連ブラック ジャック ディーラー)、天然ガスを「グリーン」な経済活動と分類し、投資を呼び込むことは、天然ガスへの中長期的な依存を招きかねないとして、反対の声が強くなっていた。そうした中で、欧州議会の経済・金融委員会、環境・公衆衛生・食品安全委員会がともに、6月14日に委任規則案に対する反対決議を採択したことから、本会議での投票が注目されていた。
今回の欧州議会本会議での承認を受けて、反対派の加盟国や議員からは批判の声が上がっている。オーストリアのレオノーレ・ゲベッスラー気候行動・環境・エネルギー・モビリティ・イノベーション・技術相は、自身のツイッターで、委任規則案をグリーンウォッシング(実質を伴わない環境訴求)だと批判した上で、委任規則案が施行されれば、ルクセンブルクとともに、EU司法裁判所に対して取り消し訴訟を提起する方針をあらためて表明した。委任規則案は、予定どおり施行される公算が高まったものの、今後も議論は続きそうだ。
(注1)詳細に関しては、調査レポート「EUサステナブル・ファイナンス最新動向‐タクソノミー規則を中心に‐」を参照。
(注2)委任規則案は、欧州議会の絶対多数決(353人以上の議員の反対決議への賛成)での反対、あるいはEU理事会でのEU総人口の少なくとも65%を占める、20以上の加盟国の反対により不承認とならない限り、施行される。
(吉沼啓介)
(EU)
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