米USTR、カナダからの太陽光発電製品へのセーフガード措置停止
(米国、カナダ)
ニューヨーク発
2022年07月12日
米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は7月8日、カナダのメアリー・エング国際貿易・輸出振興・中小企業・経済開発相との間で、米国が太陽光発電製品に課している緊急輸入制限(セーフガード)措置をカナダに対しては停止する覚書を締結した。
米国はトランプ政権下の2018年2月から4年間、一部の太陽光発電製品の輸入急増が国内産業に損害を与えているとして、該当する太陽光発電セルに関税割り当て(TRQ、注)を、そのほかのモジュールなどの製品には追加関税を導入していた。ジョー・バイデン大統領は2022年2月に、トランプ政権時の措置を一部修正するかたちで4年間延長する決定を行っている(2022年2月7日記事参照)。また、その際にカナダとメキシコとは個別交渉の上、この2カ国からの輸入がセーフガードに影響しないと判断した場合、セーフガードの完全または部分的な適用停止を行ってよいとしていた。
その背景には、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の紛争解決パネルで、米国の当該セーフガード措置が協定違反かどうかの審議が行われていたことが挙げられる。紛争解決パネルはバイデン大統領がセーフガード措置延長を決定して間もなく、米国の同措置は協定違反との裁定を行っており、それが今回の覚書につながった(2022年2月17日記事参照)。USTRもプレスリリースでその経緯に触れている。
覚書によると、米国はカナダに対するセーフガード措置を恒久的に撤廃するわけではなく、カナダに特化して設けた太陽光発電製品の輸入量の基準値を超えない限りで、措置を停止するとなっている。基準値は、2022年2月~2023年1月が1ギガワット(GW)、2023年2月~2024年1月が1.15GW、2024年2月~2025年1月が1.3GW、2025年2月~2023年1月が1.45GWとなっている。裏を返せば、カナダからの輸入量が急増してこれら基準値を超えた場合は、米国は再びセーフガード措置を発動し得る。なお、2022年2月1日以降に通関され、関税の清算がまだ完了していない輸入分については、セーフガード措置の停止がさかのぼって適用される。
(磯部真一)
(米国、カナダ)
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