イエレン米財務長官、劉鶴・中国副首相とオンライン会談、不公正な経済慣行指摘

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年07月06日

米国のジャネット・イエレン財務長官は74日、中国の劉鶴・副首相と経済に関する諸課題についてオンラインで会談を行った。会談は202110月(2021年11月2日記事参照)以来となる。

米財務省のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、会談は両政府間の対話ラインを維持する取り組みの一環と位置付けられている。両者は、コモディティー価格が上昇して食料安全保障上の課題に直面する中、両国のマクロ経済や金融分野の現状、世界経済の見通しについて「率直かつ本質的な」会談を行ったとしている。また、イエレン長官は、ロシアによるウクライナに対する戦争が世界経済にもたらす影響と、中国による不公正で非市場的な経済慣行に対して率直な懸念を表明したとしている。

米財務省のプレスリリースには明示的な言及はないものの、米主要メディアは中国側発表の会談内容にも触れた上で、両者は相互に課している追加関税問題についても話し合ったとしている。202110月の前回会談でも、中国商務部側は米国に対して対中追加関税や制裁措置の取り消し、中国企業の公平な取り扱いを求めたと発表した一方、米財務省はこれらの点については一切触れていなかった。これは、対中追加関税は米通商代表部(USTR)所管、個別の金融制裁は財務省所管、輸出管理に関する中国企業への制裁は商務省所管と、省庁間で権限が分かれている上、政権内でそれら対中政策の見直しに関する方針がまとまっていないためと考えられる。このうち対中追加関税について、イエレン長官は20224月にインフレ対策の一環で関税見直しは検討に値すると発言する一方(2022年4月26日記事参照)、キャサリン・タイUSTR代表は6月の議会公聴会で見直しに否定的な見解を述べている(2022年6月24日記事参照)。こうした中、米メディアの中には、ジョー・バイデン大統領が7月中に、対中追加関税の見直しを発表する可能性があると報じているものもある(政治紙「ポリティコ」電子版71日)。同紙は関係筋の話として、バイデン政権は(1)限られた消費財を対中追加関税対象から除外、(2)新たな適用除外手続きを開始、(3)中国政府が補助金を投じている分野に絞った上で新たな1974年通商法301条調査(注)の開始を検討中としているが、いずれも現段階で最終的な決定はなされていないとしている。そのほか、各種メディアは、政権が今週中にも見直しを発表する可能性を報じており(ブルームバーグ74日、「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版75日)、政権の動向に注目だ。

(注)USTRが貿易相手国による不公正と疑われる貿易慣行を調査し、実際に不公正と判断した場合、追加関税などの制裁措置を取ることを認める米国の国内法。

(磯部真一)

(米国、中国)

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