ミュンヘン商工会議所、ドイツの輸入依存度が高い原材料を調査
(ドイツ)
ミュンヘン発
2022年07月07日
ミュンヘン商工会議所は6月30日、先進技術にとって必要な原材料について、ドイツの他国依存度に関する調査報告書を発表した。同調査は、ミュンヘン商工会議所がドイツ商工会議所とともにifo経済研究所に委託して実施されたもの。報告書のタイトルは「ドイツはどの程度原材料輸入に依存しているか?」。
ifo経済研究所はまず、ドイツにとって将来的にカギとなる9の先端技術を選定した。具体的には、電気モーター、風力タービン、太陽光発電、3Dプリンター、ロボット、デジタル技術、ドローン、リチウムイオン電池、燃料電池を中心とした水素関連技術。その上で、(1)輸入地域の集中度、(2)選定した9技術に使われる頻度、の観点から、集中度がより高く、かつ、より多くの先進技術に使われる9の原材料を選定し、ドイツにとって対応が必要なものとした。
9原材料は、コバルト、ホウ素、ケイ素(シリコン)、黒鉛、マグネシウム、リチウム、ニオブ、希土類、チタン。たとえば、希土類は、燃料電池、風力タービン、ロボット、ドローン、デジタル技術、電気モーターの6の先端技術に使われ、かつ、ドイツの輸入(金額ベース)の45%が中国に集中していることなどが分析された。また、調査結果は、9原材料のうち、中国が7原材料(注)で世界の輸出上位5カ国に入っていることも指摘した。
ifo経済研究所は、対応策として調達の多様化を挙げ、たとえば、希土類は世界の輸出上位5カ国のうち、ドイツは2カ国にのみ依存しており多様化が可能とした。また、EUレベルでの協力も有効とし、2020年に設立された欧州原材料アライアンス()が活用できると指摘した。また、リサイクル網の構築も重要としたほか、EUが貿易協定を締結していない国からの原材料の輸入もあるとし、EUが貿易・投資協定、戦略的協定などをさらに広げることを提案している。また、高い環境基準と人権・労働者の権利を尊重している国を列記したポジティブリスト国制度を導入すべきともした。
調査を委託したミュンヘン商工会議所は、ドイツの「サプライチェーンにおける企業のデューディリジェンスに関する法律」(デューデリブラック ジャック)やEUで審議中の「企業持続可能性デューディリジェンス指令案」(欧州委、人権・環境デューディリブラック)が調達コストを高め、政府の適切な対応なしでは、特定国への原材料依存度がさらに高まる結果になると指摘した。ドイツ連邦経済・気候保護省に属する学術審議会も、ポジティブ・ネガティブリスト国制度を提案しており(2022年6月22日記事参照)、企業のデューディリジェンス実施に当たってのコスト増問題の解決が求められている。
(注)ホウ素、黒鉛、リチウム、希土類、コバルト、ケイ素(シリコン)、マグネシウム。
(高塚一)
(ドイツ)
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