上半期の乗用車生産、前年同期比ハイパーブラックジャックナスも回復傾向へ
(チェコ、ウクライナ、ロシア)
プラハ発
2022年07月22日
チェコ自動車工業会の7月20日付発表によると、2022年上半期の国内乗用車生産台数は60万6,909台で、前年同期比8.5%減となり、減少幅は第1四半期の18.9%(2022年4月27日記事参照)から縮小した。これは5、6月の製造が急増したためで、特に6月の生産台数は12万5,374台に達し、新型コロナ禍前の2019年の水準まで回復した(添付資料図参照)。同工業会のマルチン・ヤーン会長はその要因について、部品、特に半導体チップのサプライチェーン状況の改善、およびロシアのウクライナ侵攻により供給が停止した原材料・部品の確保に向けての各メーカーの柔軟な対応のあらわれと分析した。
上半期の実績をメーカー別にみると、最大メーカーのシュコダ・オート〔フォルクスワーゲン(VW)グループ〕の生産台数は35万1,006台で、前年同期比16.6%減少した(添付資料表参照)。同社は、ロシアのウクライナ侵攻によってウクライナからのワイヤーハーネスの供給が滞り、生産に大きな影響を受けていた。そのため、4月にその生産の一部をウクライナからムラダー・ボレスラフの本社工場に移管し、徐々に生産量を増やしている(2022年6月14日記事参照)。同社の生産台数は、5月に前年同月比でプラスに転じ、6月には28.2%増と加速した。また、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・チェコ(TMMCZ)の上半期の生産台数は、10.7%減の8万9,103台だった。同社は、2022年3月に新モデル「アイゴX」の製造を開始している。一方、ウクライナのサプライヤーを持たない現代チェコは16万6,800台を生産し、増加幅を第1四半期の13.1%から17.1%に伸ばした。
また、上半期における電動車の生産台数は、バッテリー電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)を合わせて6万3,952台で、全生産台数に占める割合は第1四半期の9.2%から10.5%に拡大した。シュコダ・オートは3月29日、ウクライナからのワイヤーハーネス供給の停止により、同社のBEVモデル「エニヤックiV」の生産が一時停止状況にあることを発表したが、4月26日には生産再開を発表し、フル稼働に向けて徐々に生産台数を増やしつつあるとした(同社の6月22日付ウェブページ)。
今後の見通しについて、自動車工業会のヤーン会長は、依然として過度の楽観視は控えるべきと慎重な姿勢を示した。「中国では、新型コロナウイルス感染拡大防止策により市場の状況が不透明となっており、上海周辺の封鎖が、今後チェコ国内での製造にも影響を及ぼす可能性がある。また、(ロシアのウクライナ侵攻による)地理・政治的な緊張状態に関連したガス供給の確保などの問題もある」と、同会長は指摘している。
(中川圭子)
(チェコ、ウクライナ、ロシア)
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