政府がEV振興策における恩典の内容を公表

タイ政府は5月30日の官報において、バッテリー電気自動車（BEV）振興策の恩典内容について公表した。同振興策の実施期間は2025年12月31日までとなる。

主な内容は以下のとおり。

1.対象となる車両

（1）希望小売価格が200万バーツ（約760万円、1バーツ＝約3.8円）以下でバッテリー容量が10キロワット時（kWh）以上のBEV乗用車、または同価格が200万バーツ超700万バーツ以下でバッテリー容量が30kWh以上のBEV乗用車。2022年から2025年までに国内で生産された、または2022年から2023年までに輸入された同車両。

（2）希望小売価格が200万バーツ以下でバッテリー容量が10 kWh以上で最大10席のBEV乗用車、または同価格が200万バーツ超700万バーツ以下で最大10席のバッテリー容量30kWh以上のBEV乗用車。2022年から2025年までに国内で生産された、または2022年から2023年までに輸入された同車両。

（3）2022年から2025年までにタイ国内で生産された、車両重量および積載量の合計4,000キログラム以下、かつ希望小売価格が200万バーツ以下でバッテリー容量が30kWh以上のBEVピックアップトラック。

（4）希望小売価格が15万バーツ以下のBEV二輪車で、2022年から2025年までにタイ国内で生産された、または2022年から2023年までに輸入された同車両（リチウムイオンバッテリーやタイヤの基準など、詳細については要確認）。

2.補助金

（1）希望小売価格が200万バーツ以下のBEV乗用車（席数は問わない）

・10kWhから30kWh未満のバッテリー容量：1台当たり7万バーツ

・30kWh以上のバッテリー容量：1台当たり15万バーツ

（2）BEVピックアップトラック：1台当たり15万バーツ

（3）BEV二輪車：1台当たり1万8,000バーツ

3.補助金の申請と支払い

所定の申請書と税金の支払い証明書、車両の販売書などの必要書類を用意し、補助金を申請する。補助金は四半期ごとに支払われる。

なお、資格を付与された申請者は、物品税局長と契約を結ぶ必要がある。また、同局長と契約を締結した日から30日以内に、2026年6月30日まで保証期間がある銀行保証（注）を政府担当部局に提出する。保証金額は企業の資本金によって異なることに留意が必要。

4. BEV完成車の輸入にかかる国内生産の条件

本制度を用いて、2022年から2023年までにBEV完成車を国外から輸入した場合、2024年12月31日までに、タイ国内でEV車両などを自社で、または他社に委託するなどして製造する必要がある。恩典を受けたBEV完成車の輸入台数に対する国内生産台数の比率は1対1。タイ国内での生産開始時期を、2025年12月31日まで延長する必要がある場合、上記比率が1対1.5となる。

5.国産の電池または部品を使用してBEVを製造

2026年1月1日以降、恩典取得者は、二輪以外のすべてのBEVを製造するためにタイ国産のバッテリーまたは部品を使用する必要がある。具体的に、以下の条件のいずれかを選択する。

（1）国産バッテリー（セルレベル）を2026年1月1日から使用する。

（2）国産バッテリー（モジュールレベル）を2026年1月1日から使用する。国産PCUインバーターは、2030年1月1日から使用する。また、以下5部品（モーター、減速機、コンプレッサー、BMS、DCU）のうち、いずれか1つの部品を2035年1月1日から使用する

（3）国産バッテリー（アッセンブリーレベル）を2026年1月1日から使用する。国産PCUインバーターは2030年1月1日から使用する。また、上記の国産5部品のうち、いずれか2部品を2035年1月1日から使用する。なお、2部品の組み合わせは変更可能だが、変更の際には所定の手続きを要する。

6. 4.に関する罰則

完成車を輸入したにもかかわらず、規定に則した車両を生産せずに補助金を受け取った場合、担当部局に補助金を返還させる。また、7.5％の年利と銀行保証に記載された保証金の全額を回収する。

7. 5.に関する罰則

二輪以外のBEV車両の製造に際し、5.に規定する国産の電池または部品を使用しない場合、罰金を支払う責任を負う。5の条件に従わずに生産した車両、１台当たり2倍に相当する物品税額を支払わなければならない。

（注）輸入者が船会社に差し入れる保証書。通常、銀行の連帯保証が付与される。

（岡本泰、ナオルンロート・ジラッパパー）