カナダ政府が銃規制強化へ、米国での銃乱射事件受け
(カナダ、米国)
米州課
2022年06月07日
カナダのジャスティン・トルドー首相は5月30日、銃規制をさらに強化する方針を発表した。同月、米国ではニューヨーク州やテキサス州で銃乱射事件が相次いで発生し、カナダ国内でも銃規制に対する関心が高まる中、銃器規制の強化に踏み切った。
カナダ政府が「ここ40年ほどで最も強力な銃規制策」とする新規制案によると、個人が新規に国外から拳銃を入手して国内へ持ち込むことや、国内で売買や譲渡を行うことを全国的に禁止する。また、家庭内暴力やストーカー行為などに関与した者の銃器使用許可証は没収される。
刑事罰の強化や法執行機関による銃器犯罪の捜査手段の提供、国境警備の強化により銃の密輸と人身売買に対処することも定められる。
また、銃による身近なパートナーからの暴力、性暴力、自傷行為の防止のため、新たに「レッドフラッグ」法を制定することも盛り込まれている。裁判所が自身や他者にとって危険と考えられる人物に法執行機関への銃器の引き渡しを要求することが可能となり、身の危険を訴え、申請をした人物の身柄の安全確保を図る。
拳銃の売買や譲渡に関し、全国的凍結を迅速に実施できるようにするため、公安相は規制改正法案を既に上下両院に規制改正法案を提出しており、2022年秋に可決、発効となる見込みだ。
トルドー首相は声明の中で「銃による暴力によって命を奪われるカナダ人は1人では済まない。私は、銃による暴力が国中の地域社会にもたらす悲劇的な代償をあまりにも多く目にしてきた。今日、われわれは、地域社会から銃を排除し、全ての人にとってより安全な未来を築くために、カナダ史上最も強力な対策を提案する」と述べている。
カナダでは2020年4月、ノバスコシア州で銃撃事件が発生し、カナダ史上最も多くの犠牲者を出した。政府は同年5月、高い殺傷能力を持つ銃器約1,500種の新規入手や売買を禁止した。政府による買い取りプログラムにより、先住民や狩猟を生業とする場合を除き、保有者に対して該当する銃器を手放すことを促した。今回の声明では、軍用レベルの銃器が市場に流出した場合には、自動的に取り締まり、没収する仕組みを作るとしているほか、長物銃については、弾倉を5発以上装填(そうてん)できないよう永久改造することを義務づけ、大容量弾倉の販売や譲渡を刑法で禁止するとしている。
カナダは森林自然環境に恵まれ、狩猟を伝統的生業とする先住民族や、趣味や娯楽とする一般市民も多い。2019年の世論調査によると、護身目的での銃保有者は少なく(4%)、狩猟(44%)や娯楽射撃(36%)が多い傾向にある。
(高山さわ)
(カナダ、米国)
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