カナダ・ケベック州でのフランス語使用強化法、進出日系企業はコスト負担増を懸念

(カナダ、日本)

トロント発

2022年06月02日

カナダ・ケベック州議会がフランス語の使用強化法案を採択(2022年6月2日記事参照)したことを受け、コスト負担増を懸念する日系企業があることが明らかになった。同法は、フランス語を職場の共通言語とする言語規定を従来の従業員50人以上から25人以上の企業へ拡大適用することが含まれるなど、企業運営への影響が指摘されていた。

ジェトロが6月1日に在ケベック州の日系企業に聞き取りを行ったところ、「従業員数25人以上の企業が適用対象になると、当社は新法の影響を受ける。今後、事業を拡大させるには、フランス語を話せる社長を安定的に日本本社から派遣、駐在させる必要が生じるが、英語を話せる駐在員ですら本社での人選が難しく、現実的ではない」として、同法が企業成長の妨げになるとの懸念を示した。

また、企業にとってはコスト負担増の問題もある。ケベック州の義務教育ではフランス語で行われる学校への通学が原則だが、これまで駐在員などの一時就労許可保持者の子女は、例外規定の適用により英語で行われる学校への通学が認められていた。しかし、新法では例外規定の適用は最長3年までに制限され、公立教育では3年を超える英語教育を受けられなくなる。同社では、「駐在員の子女を英語で行われる私立校に通わせる必要が発生するが、学費が高く、本社のコスト負担が増えるため、問題になる可能性がある」とコメントした。

他方、新法制定により医療サービスがフランス語に限定して提供される可能性があるとの報道もみられたが(CBCニュース5月21日)、フランソワ・ルゴー州首相はそうした報道は誤報であるとして、5月31日、新法について「英語を母国語とする市民は、これまでと同じように母国語での医療サービスを受けることができる」との政府広告を地元紙へ出した(「モントリオール・ガゼット」紙5月31日)。

ジェトロの調べでは、ケベック州には2021年12月時点で45社の日系企業が進出している。

(飯田洋子)

(カナダ、日本)

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