在中欧州企業アンケート、サプライチェーンの一層の現地化を検討する企業が増加
(中国)
北京発
2022年06月28日
在中国欧州企業の団体である中国EU商会(注1)は6月20日、景況感調査の結果を発表した(注2)。同調査は2004年から実施されており、各年の在中欧州企業の業績や課題などについて取り上げている(注3)。
過去1年の中国のビジネス環境については、「より困難になった」との回答が60%を占めた。自社にとって最も影響が大きかった課題としては、「新型コロナウイルスの感染拡大」を挙げた企業が28%と最多で、「中国経済の減速」が12%で続いた。
2021年の業績に関しては、66%の企業は売上高が前年比で増加と回答したほか、79%は利益が黒字だったと回答した。
中国における事業展開については、62%(前年調査では59%)が2022年も中国事業を拡大すると回答した。中国からの投資の引き揚げと第三国・地域への移転を検討している企業は11%にとどまった。さらに、68%の企業は、今後の重要な投資先国・地域として中国が上位3位以内に入ると回答した(注4)。
また、20%(前年調査では6%)の企業が中国国内のサプライチェーンをより現地化することを計画しているとした。他方、製造拠点を有する企業(366社)に聞いたところ、「何らかの部品や設備を中国外から輸入しており、国内には信頼できる代替品が存在しない」との回答が31%あったほか、中国内に代替品が存在するが、コスト・品質・互換性などの点で問題があるとの回答が計50%となり、「輸入している部品や設備は存在しない」という回答は19%にとどまった(複数回答)。
規制上の課題については、40%が「不透明な規則や規制」を、30%が「予測が難しい立法環境」を挙げた(注5)。このほか、14%の企業が、市場参入のために技術や営業秘密の移転を強制されたことがあると回答した(注6)。さらに、問題があると回答した企業のうち63%が、同問題は約2年前から現在までの間に発生した(現在進行中のものも含む)と回答しており、報告書では、強制的技術移転を禁じた外商投資法の施行(2020年1月1日)後も同問題が継続していると指摘している。
中国が2060年までの達成を宣言しているカーボンニュートラルについては、同目標達成に向けた取り組みを検討・実施しているとの回答が6割を超えた。達成手段としては、再生可能エネルギーの利用などの「エネルギー使用における脱炭素化」を挙げる回答が76%、省エネ技術への投資などの「エネルギー需要の削減」が68%となっている(複数回答)。
(注1)本調査の報告書によると、中国EU商会は現在1,800社以上の会員企業を有し、国内9都市(北京市、天津市、江蘇省南京市、上海市、遼寧省瀋陽市、広東省広州市・深セン市、四川省成都市、重慶市)に拠点を有する。
(注2)同調査は2022年の2月から3月にかけて、ドイツ・コンサルティング会社のローランドベルガーと共同で実施したもので、回答企業数は620社となっている。
(注3)今回の調査のほか、直近の上海市など国内各地での感染拡大と防疫規制強化やロシアによるウクライナ侵攻の影響などを聞いたクイックアンケートも別途、実施・公表されている(2022年5月11日記事参照)。
(注4)業種別では、専門サービス業の40%、石油化学・化学工業・製油業の32%、法律サービスの30%が中国を最も重要な投資先とみなしている。
(注5)自社の中国での事業展開において最も重要な規制や障壁を上位3つまで選択する形式。
(注6)具体的には、ビジネス上の交渉や合弁の条件として技術の移転を迫られたと多くの企業が回答したほか、31%の企業は政策において明文で要求された、あるいは政府関係者から口頭で移転を迫られたと回答している。
(小宮昇平)
(中国)
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