EU、WTO閣僚会議での合意達成を歓迎

(EU、世界)

ブリュッセル発

2022年06月20日

WTOの第12回閣僚会議(ジュネーブ)が6月17日早朝に閉幕し、漁業補助金に関する協定に合意したほか、複数の分野で閣僚宣言の採択に至ったことを受けて、欧州委員会は会議の成果を歓迎する声明を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。会議に出席した欧州委のバルディス・ドムブロフスキス執行副委員長(通商担当)は、合意を受けて同日発表した声明の中でまず、新型コロナウイルスおよび将来のパンデミックへの備えに関する宣言、および食糧安全保障に関する宣言の2つに合意したことを挙げ、WTOが緊急の事態への対処について一定の成果に達した点を評価した。パンデミックへの備えでは、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)上の特定の義務を免除し必要な場合に特許権者の同意なしにワクチンの製造や輸出を行うことについて、約1年に及ぶ議論の末、EUとして柔軟性を示し、合意に至った、と述べた。食糧安全保障については、あらためてロシアが食料を武器として使用していると批判し、EUとしてウクライナ産の穀物など食料品輸出を援助する体制を整え、アフリカなど食糧安全保障のリスクにさらされている国々を支援していく意向を示した。

漁業補助金に関する協定については、WTOにおいて過剰な漁獲につながる補助金の削減に関する多国間協定に合意したことを大きな進歩だと評価しつつ、今回の合意は国連持続可能な開発目標(SDGs)14.6項が要求する目標の水準を完全には満たしておらず、引き続き関係国と協議を続けていくとした。

またWTO改革については、閣僚会議の成果文書の中で、次回の閣僚会議に向けてWTO一般理事会の下で取り組むこと、現在機能不全に陥っている紛争解決機関の上級委員会については、2024年までに完全に機能する紛争解決制度を回復させるべく議論を進めることが盛り込まれた。これについて、ドムブロフスキス執行副委員長は「WTOはその根元から枝葉までの改革が急務だ。そして紛争を効果的な解決できる機関でなければならない」と述べ、EUとしてのWTO改革への意気込みをあらためて強調した。

閣僚会議の合意を受けて、欧州産業連盟(ビジネスヨーロッパ)は同日に声明を発表。今回の合意は、多国間貿易体制を存続させるものだと評価し、ビジネス界にとって必要な成果として、電子的手段による取引への関税不賦課の延長を挙げた。他方、ワクチンに対するTRIPS協定上の義務の免除については残念な結果だとし、「ワクチンへのアクセスという問題を解決するものではない上、将来のパンデミックに備える取り組みを弱体化させるものだ」との見方を示した。

(安田啓)

(EU、世界)

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