フランス国民議会選挙、大統領与党が過半数割れ
(フランス)
パリ発
2022年06月21日
フランスの国民議会選挙の決選投票が6月19日に行われ、内務省によると、エマニュエル・マクロン大統領の右派連合「アンサンブル」が245議席を獲得し多数派となったものの、過半数の289議席には届かなかった。急進左派のジャン=リュック・メランション氏が率いる左派連合「環境・社会 新人民連合(NUPES)」が131議席を獲得して次点となり、これに急進右派「国民運動(RN)」が89議席、右派・共和党が61議席で続いた。
決選投票の投票率は46.23%と第1回投票の47.51%から低下したが、前回2017年の決選投票(42.64%)を上回った。
1958年以降の第5共和政下で、大統領の支持政党が国民議会選挙で敗北し、過半数の議席を獲得した野党が政権を運営するコアビタシオン(保革共存)が成立した例は少なくない。しかし、今回のように、過半数を持たない与党政党が政権を運営するのはフランソワ・ミッテラン政権下のミシェル・ロカール内閣(1988~1991年)以来となる。
エリザベット・ボルヌ首相は同日、今回の結果が生み出す政治状況は国際的な課題に直面するフランスにとり大きなリスク要因になるとの認識を示す一方、安定を確保しつつ改革を実現するために必要な多数派の確保に努めることを約束。政府が今夏に導入を目指す、物価高騰に対応した家計支援措置のほか、完全雇用、環境(に配慮した社会への)移行、教育・医療、産業・エネルギー・農業の安全保障などの分野で結集することは可能だ、と述べた。
各種報道では、改革推進に向けた政策運営は極めて難しくなるとの見方が大勢だ。6月20日付の「ルモンド」紙は、議席数を増やしたNUPES、RN、共和党の野党グループは、内閣不信任案の提出(58人の議員の賛同が必要)や憲法評議会による法案の違憲審査請求(60人の議員賛同が必要)を多用することが可能だと指摘した。
カルバドス県の選挙区から立候補したボルヌ首相は52.46%を獲得して当選した一方、立候補した閣僚のうち、アメリー・ド・モンシャラン・エコロジー移行・国土結束相、ブリジット・ブルギニョン保健・予防相、ジュスティヌ・ベナン海洋担当副大臣の3人が敗退したと報じられ、ブルギニョン保健・予防相は既に辞任を表明した。これを受けオリビア・グレゴワール政府報道官は、6月20日に出演したラジオ番組「フランス・アンテール」で、新内閣の閣僚名簿が数日中に発表される予定だと述べた。
各紙報道によれば、選挙後初となる国民議会は6月28日に招集され、ボルヌ首相の施政方針演説は7月5日に行われる予定だ。また、NUPESは7月5日に内閣不信任案の提出を計画している。
(山崎あき)
(フランス)
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