水素燃料電池の特許、中国が世界の7割

(世界、中国、日本、ドイツ、韓国、米国)

国際経済課

2022年05月19日

世界知的所有権機関(WIPO)は5月17日、特許現況レポート「輸送関連の水素燃料電池」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2020年(注1)の世界の水素燃料電池の特許出願件数(注2)は1万523件(注3)で、過去最大の2019年(1万1,291件)に次ぐ大きさだった。出願者の国籍別では、中国が7,261件で最も多く、全体の69%を占める。日本(1,186件)、ドイツ(646件)、韓国(583件)、米国(403件)がそれに続く。2014年までは日本がトップを維持していたが、2015年以降、中国の独走状態が続く。

輸送関連の水素燃料電池の出願件数は、世界全体で3,189件(2019年は3,302件)と、水素燃料電池全体の3割を占める。輸送手段別の割合では自動車が71%と最大で、船舶(10%)、航空(8%)が続く(注4)。2020年の内訳は発表されていないが、出願者の国籍別件数(2019年)では、中国が1,760件(そのうち自動車は1,617件)、日本が541件(同511件)、ドイツが386件(同277件)と上位を占める。

同レポートは、企業別の輸送関連の水素燃料電池の特許に関し、権利存続中(active)の特許件数を公表している。2021年の有効特許件数では、トヨタ自動車(2,720件)が最大で、現代自動車(1,402件)、ホンダ(1,191件)、ゼネラルモーターズ(GM)(697件)、フォルクスワーゲン(VW)・グループ(671件)などが続く。中国企業では、燃料電池車(FCEV)メーカーの武漢格羅夫(グローブ、489件)と大手自動車メーカーの中国第一汽車(FAWグループ、153件)の2社が上位20社に含まれた。2013年創業のグローブは2019年ごろまで100件ほどだったが、2020年以降に件数が急増している。なお、大学および研究機関別では、中国科学院(121件)、清華大学(88件)、吉林大学(80件)と中国勢が上位3位を占める(注5)。

WIPOのダレン・タン事務局長は「気候変動への対応のため、水素燃料電池やその他クリーン技術を一刻も早く利用者に届けられるよう、われわれはイノベーションを中心とした政策や優遇措置、投資を増やす必要がある」と述べた。

(注1)特許出願から公開まで平均18カ月の「時差」があるため、確定値は2019年までで、2020年は暫定値。

(注2)件数は同じ発明を複数国に特許出願した場合、そのまとまり(特許ファミリー)を1件としてカウント。

(注3)2020年の世界全体の件数は明示されていないものの、「中国が全体の69%を占める」とのWIPOの説明を基に、中国の割合を「69.0%」と仮定してジェトロで算出。そのため、実際の件数と異なる可能性がある。

(注4)輸送手段別の出願件数は一部重複があるとみられる。

(注5)実用新案権を除く。

(古川祐)

(世界、中国、日本、ドイツ、韓国、米国)

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