4月のインフレ率は9.0%、エネルギー価格上限引き上げが影響
(英国)
ロンドン発
2022年05月19日
英国国家統計局(ONS)は5月18日、2022年4月の消費者物価指数(CPI)上昇率を前年同月比9.0%と発表、1997年の統計開始以降最高値となった3月を上回った(関連ブラック ジャック web参照)。英国は、ドイツ(7.4%)やフランス(4.8%)を含むG7諸国の中で最も高いインフレ率となっている(注)。住宅費を含む消費者物価指数(CPIH)も同7.8%と、2006年の統計開始以降の最高値を更新した。
国立経済社会研究所(NIESR)はCPI上昇率の内訳として、電気代は前月比41%増、ガス価格は同67%増と分析、2022年4月からのエネルギー価格上限引き上げが大きな要因とした(関連オンライン ブラック参照)ガス・電力市場局(Ofgem)によると、過去6カ月間で世界のガス価格が記録的に上昇し、卸売価格はこの1年間で4倍になったとしている。
ガソリンの平均価格は1リットル当たり161.8ペンス(約257円、1ポンド=100ペンス、1ポンド=約159円)、軽油の平均価格は同176.1ペンスと、どちらも前月に引き続き過去最高値を更新した。これを踏まえ、クワシ・クワルテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略相は大手石油小売業者に対し、燃料税の引き下げ分を自動車利用者に還元するように伝えたと報じられている。燃料税については、リシ・スーナック財務相が2022年3月に燃料価格高騰に伴い1リットル当たり5ペンスの引き下げを実施しており、一部の小売業者が利益を上げていた。
新型コロナウイルス感染拡大とロシアによるウクライナ侵攻により、エネルギーのほか、輸送費、原材料費も上がっている。食品卸売り大手ビッドフードのアンドリュー・サレー氏は、ヒマワリ油が1年前の2倍の価格に、パンは20〜30%価格が上昇したとしている(「BBC」5月17日)。ONSはこうした状況も踏まえ、5月30日に一部食品の価格変動の分析を発表予定としている。
また、スーナック財務相はインフレを受け、2022年後半に企業向けの減税実施を宣言したと報じられている。
NIESRによると、人口の5%の150万世帯が、食費と光熱費の合計が可処分所得を上回る見込みとなっている。これ以外の1,130万世帯でもインフレと増税に賃金増や給付金が追いつかず、家計が圧迫されているとした。また、政府の援助がなければ、さらに約25万世帯が困窮(destitution)に陥るとした。
(注)5月18日時点で未発表の日本を除く。
(島村英莉)
(英国)
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