保健省、コロナ緊急事態宣言を解除へ
(ブラジル)
サンパウロ発
2022年05月10日
ブラジル保健省は4月22日付省令第913号を公布し、2020年2月から新型コロナウイルス対策として施行していた「国家の重要な公衆衛生上の緊急事態宣言」(ESPIN)を解除することを決定した(注1)。同省令は、公布の30日後にあたる5月22日から施行される。
保健省は解除決定の理由として、新型コロナ感染率や死亡率などが改善したこと、国民のワクチン接種率が高い水準に達したこと(注2)などを挙げた。また、今後も新型コロナ禍への対応は続き、「ESPINの解除後も維持すべき新型コロナ対策措置はある」と述べた(4月22日付保健省公式サイト)。
例えば、保健省傘下の国家衛生監督庁(ANVISA)は、ANVISA2020年12月10日付RDC決議第444号を公布し、ESPINが継続する限り、ANVISAへの製品登録がない新型コロナワクチンであっても緊急使用を認めているが、ESPIN解除後は、一部のワクチンが使用できなくなる可能性がある。現在、米国ファイザー製、英国アストラゼネカ製、ベルギー・ヤンセンファーマ製のワクチンはANVISAへの製品登録が完了しており、ESPINが解除されても問題なく使用を継続できる。ただ、中国シノバック製のワクチンは、緊急使用が許可されたのみで製品登録は完了していないため、ESPINの解除により使用できなくなる可能性がある。
これを踏まえ保健省は、2022年4月22日付の公式サイトで、ワクチン接種が継続できるようANVISAに対し、製品登録が完了していなくとも緊急使用が認められている新型コロナワクチンについては、「ESPIN解除後も使用を許可するよう要請した」と発表した(注3)。これに対し、ANVISAは「検討などには15日間必要」と回答している(4月22日付保健省公式サイト)。
また、ESPINを根拠に、全国の州政府や地方自治体は、新型コロナ対策として病床数の増加、医療人材の一時的な確保、また、自治体が入札なしに医療品を購入できるよう、新型コロナ対策のため、柔軟なルールを数多く制定してきた。そのため、全国保健局審議会(CONASS)と全国地方自治体保健長官審議会(CONASEMS)はESPINが解除される以前の4月19日、保健省にESPIN解除のための猶予期間として「90日間」を求めていた(注4)。この度のESPIN解除にかかる省令施行までの期間が30日間であることに対し、CONASSのネシオ・フェルナンデス会長は4月22日付の個人ツイッターアカウントで、猶予期間の短さを批判しつつ、「CONASSは各州政府に(ESPINが存在することで有効だった)各種法令を(今後も有効とするため)、WHOが宣言した『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)』を根拠とするよう指示する」とツイートした。さらに、同会長はCONASS公式サイト(4月27日付)で「万が一、(新型コロナによる)感染者数、入院者数、死者数が増えた場合に備え、新たな(新型コロナ対策の)制限措置を講ずるための基準を設ける必要がある」と指摘した(注5)。
(注1)ESPINは2020年2月3日付保健省令第188号によって制定された。
(注2)保健省傘下のオズワルドクルス財団のデータによれば、5月3日時点で新型コロナワクチン接種について、1回接種済みが全国人口比の83.18%、所定の回数接種済みが76.93%、ブースター接種を接種済みが41.47%。
(注3)その他、保健省は、薬局で抗原検査を実施することを許可したANVISA2020年4月28日付RDC決議第377号などの措置の継続も求めている。
(注4)4月28日付現地紙「グローボ」によると、CONASSが調べたところ、全国の州政府によって公布された法令は5,000以上あるという。
(注5)WHOは2020年1月30日、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を宣言した。
(エルナニ・オダ)
(ブラジル)
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