カナダ政府、CUSMAに基づく乳製品関税割り当て実施に関する新しい運用方針を公表
(カナダ、米国、ニュージーランド)
米州課
2022年05月18日
カナダ政府のメアリー・エング国際貿易・輸出振興・中小企業・経済開発相は5月16日、「カナダ・米国・メキシコ・協定(CUSMA、米国では「米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)」と呼ばれる)に基づく乳製品に関する輸入関税割り当て制度(TRQ)の新しい運用方針について声明を発表した。
エング国際貿易相は声明の中で、「今回の発表は3月2日~4月19日に実施したパブリックコメント(米USTR、ブラック ジャック)を踏まえたもの」とし、「CUSMAの紛争解決パネルは、米国政府による申し立ての大部分に関してカナダを支持する判決を下した」として、「新しい方針においては、(自国の)乳製品加工業者用にTRQの一部を留保するというカナダの慣行がUSMCAに矛盾している、という同パネルの唯一の指摘に対処し、特定の加工業者のためのTRQの保留枠の使用を終了することにした」と述べた。
加えて、「われわれは国際協定の下での約束と義務を真剣に受け止めている。これらには、カナダがCUSMAの下で、最も近しい貿易相手国である米国と約束した内容が含まれる」とした上で、「新たな運用方針は、USMCAの紛争解決パネルの判決に準拠するだけでなく、カナダが乳製品の供給管理システムを維持するという観点で、CUSMAに基づいたTRQを管理する完全な裁量権を持っているという認識に完全に準拠していると確信している」と述べた。
カナダ政府の発表を受け、米国通商代表(USTR)のキャサリン・タイ代表は同日付で、非常に失望しているとの声明を発表し、「われわれの最優先事項は、米国の労働者、生産者、農家および輸出業者がUSMCA下で約束された市場アクセスから利益を得られるようにすることであり、このことはカナダが本日の声明を発表する以前に直接伝えていたが、今日に至るまで、USMCAに基づくカナダの約束が完全に実施されたのを見たことがない。われわれは今後数日間で次のステップを決定するにあたり、あらゆる次善策を検討し、利害関係者や国会議員らと協力して進めていく」と述べており、今後の米国政府の出方が注目される。
なお、カナダ政府による乳製品についてのTRQの運用については米国以外の他国からも市場アクセスを制限するものとして批判が出ている。ニュージーランド政府のダミエン・オコーナー貿易・輸出成長担当相は2022年5月12日、「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)」に基づく乳製品の関税割当(TRQ)の実施に関して、カナダに対する紛争解決手続きを開始したとの声明を発表したばかりだ()。
(高山さわ)
(カナダ、米国、ニュージーランド)
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